真実のほこり
掲載日:2015/02/21
真実は独り、リビングに居た。
カーテンの隙間から、朝の陽が射し込んでくる。宙を舞うほこりがそれを受け輝きはじめる。
ハウスダスト―
真美はそれを初めて美しいと思った。
いつもは〝彼〟を迎え入れるために決して許さないそれを。
しかしその彼がこの部屋に来ることはもうない。美しいという感慨を分かちあうことも、永遠にない。真実は独り、それに見惚れるしかない。
隣の家のドアが開き、閉まる。時計を見るとまだ8時だった。週末、土曜日。予定のある隣人が、足早に駆けていく。ヒールの音だった。
真実も今までだったら、忙しく立ち回っている時間だった。掃除に、軽食の用意に、お化粧も―
しかしもうその必要はない。隣人の彼女のように、胸を躍らせ、誰かを想うことも、ない。
真実はきらめくハウスダストに手を伸ばす。しかしほこりはほんの少しの空気抵抗にも揺れ動く。光を放つそれを、その手にすることは出来ないのだ。
真実は独り、リビングに居る。多分、今日はずっと。




