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問題解決

作者: 煉瓦

 今日、私立の中学に通うジョセフィーヌは宿題に追われていた。

 どこの学校も、生徒に勉強をさせるために、宿題を出す。もちろん、ジョセフィーヌの通う学校も、それの例に漏れなかった。私立とだけあって、進学率を上げるために、先生側も必死で、難しい問題を出してきていた。


 ジョセフィーヌは、父親が外国人で、幼い頃からいじめを受けていた。彼女の小学校の成績は悪くはなかったが、良くもなかった。しかし、いじめのせいで、小学校のクラスメイトが通う公立の中学校には行かず、この私立の中学校に通うことになったのだった。

 また、ジョセフィーヌの通う中学校は、進学校として名高く、彼女の両親もそれを期待して、入学させたのだが、まったく成績がふるわず、落ちこぼれていく一方だった。ジョセフィーヌ自身、入学できたのは奇跡だと思うぐらいだった。


 とにかく、今日、ジョセフィーヌは宿題に追われているのである。いくら出来が悪いとしても、やらないといけないのである。

 ジョセフィーヌはというと、全く進まない宿題にむしゃくしゃしていた。完全にやる気はなくなっていた。

 今日の宿題を終わりにしようと思い、ジョセフィーヌは、おもむろに、ノートパソコンを立ち上げた。そして、いつものようにネットサーフィンをしようとした。

 いつもだったら、数分後には、OSがきちんと立ち上がり、インターネットにつながるはずだったのだが、今日は違った。真っ黒な画面に、白い文字で一言、

「>宿題、大丈夫かい?」

とだけ表示されていた。

 ジョセフィーヌは怖くなって、パソコンの電源を切ろうとした。しかし、電源ボタンを押しても、全く切れる様子がない。

 さっきの文字の続いて、再び白い文字が表示された。

「>酷いなあ。君の宿題を手伝ってあげようと思って、話しかけてきたのに」

宿題を手伝ってくれる……? ジョセフィーヌは、まさかと思った。画面をよく見てみると、「>」と表示されている。ここに文字を打ち込めば良いのだろうか、と恐る恐る

「>それは一体どういう意味?」

とジョセフィーヌは打ち込んだ。

 すぐに返答が返ってきた。

「>うん、そのままの意味だよ。君が大層悩んでいるのを、ちょっとのぞき見させてもらったんだ」

その返事のあと、再び「>」の表示がされていた。

 切羽詰まっていたジョセフィーヌは、深く考えずに、

「>分かったわ。教えてちょうだい」

と打ち込んだ。

「>合点承知!」

と、黒い画面から白い文字が映し出された。

 さっそく、ジョセフィーヌは、一番悩まされている数学の問題文を打ち込んだ。

 すぐに解答が返ってきた。彼女はそれを、宿題の解答欄に書き込む。

「>本当に、これ当たっているの?」

と、ジョセフィーヌは入力すると、

「>君って疑ってばっかだね。コンピューターは正確だって」

と返ってきた。コンピューターのくせに生意気ね、とジョセフィーヌは思ったが、一番悩まされていた問題が、いとも簡単に解答されてしまっていたために、文句はこれ以上打ち込まず、

「>ありがとう」

とだけ打ち込んだ。そして、今度こそ電源を落とそうとしたが、

「>もっと、もっと宿題してあげるよ! 問題をちょうだい」

と、またもや表示された。

 ジョセフィーヌは、意地悪をしてやろうと、次は、国語の問題を、一語一句間違えずに打ち込んだ。これも、またすぐに解答が返ってきた。

「>あなたって、どんな問題でも解けるの?」

と、ジョセフィーヌは入力すると、

「>うん。そうだよ。だから、もっと、もーっと、問題が欲しいな」

と、ノートパソコンは表示した。

 次々と問題文を打ち込んでいくジョセフィーヌ。問題を解くノートパソコン。気がつくと、すべての宿題が終わっていた。

「>ありがとう。あなたのおかげで、すっかり片付いたわ」

「>どういたしまして。また、問題が出てきたら、何でも聞いてよ」

そう表示されたかと思うと、プチンと電源が切れた。

 ジョセフィーヌは、再度パソコンの電源を入れると、今回は、普通にOSが立ち上がっただけだった。


 ジョセフィーヌは、今度は夏休みの宿題に、悩まされていた。そして、この前のように、パソコンが問題を解決してくれるのではないかと、淡い期待を持ちつつ、自分のノートパソコンを立ち上げた。

 OSは立ち上がらず、あのときのような真っ黒な画面が表示された。そして、

「>問題を持ってきたのかい? この前のように、解いてあげるよ」

という白い文字が並んでいた。

「>ありがとう。それでは、打ち込むね……」

ジョセフィーヌは、問題を入力していった。そして、コンピューターは、その問題の解答を表示した。表示されたものを、ジョセフィーヌは宿題の解答欄に書き込んでいった。その繰り返しで、宿題は三日も経たずに、すべて終わった。

「>ありがとう。また、助けられたわね」

「>人間の問題を解くのが、コンピューターの役割だもの。当たり前のことをしただけだよ」

そう表示されとたん、急にノートパソコンの電源が落ちた。もう一度、電源を入れると、パソコンは普通に立ち上がるだけだった。


 ジョセフィーヌは、再び悩んでいた。今回は宿題ではない。学校で靴を隠されたのだった。靴のない下駄箱には、

「この外国人め! お前がいるだけで、邪魔なんだよ」

と、殴り書きされたノートの切れ端が入っていた。

 このことについて、担任の教師に伝えたが、あまり相手にしてもらえなかった。

 家に帰って、疲れたなあと思いつつ、パソコンを立ち上げた。真っ暗な画面しか表示されていなかった。壊れたのかしら、と思って、再起動を書けようとすると、

「>どうやら、また問題があるみたいだね」

と表示された。

「>もう宿題なんてないわよ」

と、打ち込んだが、

「>あなたが困っているときに、この画面が表示されるんだよ。なんでも解くからさ。さ、打ち込んでよ」

 どんなに難しい問題でも、このノートパソコンは解いてくれた。まさか、今回は勝手が違うだろうと思っていたが、今の悩みを打ち込んだ。

「>今日、靴を隠されたの。だれが、隠したか教えてくれない?」

すぐに返事が返ってきた。それは、ジョセフィーヌが一番の友人だと思っていたクラスメイトだった。かなりのショックだった。

「>嘘ではないでしょうね?」

と、ジョセフィーヌは打ち込むと、

「>まだ、コンピューターを疑うのかい? 言ったでしょ、コンピューターは正確だって」

と表示された。

「>それじゃあ、私はどうしたらいいの?」

ジョセフィーヌは打ち込んだ。これも、またすぐに返事が返ってきた。

「>両親に言って、問題を大きくすること。すると、君の靴を隠した犯人は、学校にいられなくなるよ」

 親友に裏切られたショックだったため、このパソコンの言うことを、ジョセフィーヌは実行した。パソコンの言うとおり、ジョセフィーヌの両親は騒ぎ立て、靴を隠したクラスメイトは、転校していった。


 ジョセフィーヌは、すっかりこのコンピューターの虜になっていた。悩み事があると、すぐに真っ黒な画面に白い文字で、

「>今日はどうしたの」

と表示されるようになったからだ。

 ジョセフィーヌは、質問をする。

「>今期のテストの山はどこなの?」

「>テストの山はね……」

 コンピューターの返事は、完璧だった。山が当たり、成績は右肩上がりだった。両親はとても喜んだ。もちろん、ジョセフィーヌも喜んだ。

 高校入試の時もそうだった。いくら成績が上がったとしても、この進学校に入るのは無理だよと言う先生の言うことを信頼せず、コンピューターの

「>ここが山さ。ここさえやっていれば、絶対に受かるよ」

と言う言葉を信用した。

 コンピューターの言うとおり、山は当たり、無事、第一志望の高校に進学できた。

 両親は、娘の実力を信じたかいがあったと、胸をなで下ろした。ジョセフィーヌも、このパソコンの言うとおりに生きていれば、私は完璧になれると信じていた。


 それからも、なにかとつけて、コンピューターに宿題を解いてもらったり、テストの山を当ててもらったりしていた。

 コンピューターは、拒否もせずに、淡々と解答を表示していった。


 高校に入学して、始めてジョセフィーヌは恋をした。テニス部の先輩だった。テニスが上手なのは、当たり前として、容姿も良く、なおかつ性格も良かった。

 もちろんライバルもいた。先輩と付き合っているクラスメイトだった。

 どうにかして、そのクラスメイトから、先輩を奪いたい。そんな気持ちが、ずっと心の中にこもっていた。

 そのことについて、いつものようにコンピューターに聞いた。

「>ねぇ、あのクラスメイトと先輩を別れさせるにはどうしたらいいの?」

コンピューターは答える。

「>クラスメイトを殺すことだよ」

「>殺すですって?」

「>そう。殺すこと。簡単にできるさ。いつも、彼女は恋人に会うため、朝早くに家を出るんだ。それで、明日は歩道橋を通る。下は電車が通るボロボロの歩道橋をね。学校への近道なんだ。そこから突き落とせば、彼女は死ぬ」

 ジョセフィーヌの指は震える。それでも、質問を打ち込んだ。

「>私が疑われることはないの?」

返事はすぐに返ってきた

「>うん。あんな所を通る方が悪いで済むんだ。君への疑いは全く出てこないね」

 ジョセフィーヌは安心して、

「>分かった。明日、やってみせるわ」

と、打ち込んだ。コンピューターは、

「>コンピューターの言うことは、正確だからね」

そう表示したかと思うと、勝手に電源を切れた。


 翌日、ジョセフィーヌは早朝に起きて、コンピューターが言った歩道橋へ行った。着いた頃、ちょうど、そのクラスメイトが歩道橋を歩いていた。

 ジョセフィーヌは、そっと近づいて、この歩道橋の一番もろいところで、クラスメイトを突き落とした。

 しかし、クラスメイトは落ちなかった。何故なら、ジョセフィーヌの腕をがっしりとつかんでいたからだ。

「こけたところ拾ってくれてありがとう。ジョセフィーヌさん。よければ、上まで拾い上げてくれないかしら」

ジョセフィーヌはあせった。このままだと、自分も落ちてしまうと。しかし、コンピューターの言うことは、正確なのだ。このまま、こいつを振り落とせばいい。

「拾い上げるって……。こんなに足場が悪いのに……。離しなさいよ!」

 ジョセフィーヌは、ライバルであるクラスメイトを振り落とそうとしたが、

「あっ……」

ジョセフィーヌはバランスを崩した。そして、そのまま二人は線路へ落ちていった。


 一方、ジョセフィーヌの部屋のノートパソコンは、何もしていないのに、起動していた。いつもの真っ黒な画面だった。そして、白い文字でこう表示した。

「>あぁ、付け加えておくと、先輩が君のことを振り向いてくれるかどうかではないんだ。あと、疑われるはずないもの。君だって死ぬんだから。でも、問題解決したからいいよね」

 その表示の後、パソコンは自然に切れた。

 そのコンピューターは、二度と起動することはなかった。

自サイトの転載です。

反省点としては、ネタありき。

ありきたり。描写が甘い。


当時のあとがき

なんか高級そうな名前で、主人公の名前に「ジョセフィーヌ」と置いたのですが……なんか逆に野暮ったい感じが……

タモリっぽい話になってしまいました。自分でも意外です。

二年前の作品になるのかな。文章がつたないです。オチもつたないorz

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