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07

人魚に生まれてから一年ほど経った。

午前中はお母様と人魚のルールと役割についてのお勉強。

ルールその一。大人になるまで海の上に出てはいけない。

ルールその二。歌は指定区域、又は許可が降りたときしか歌ってはならない。

この二つをきつく言い渡された。理由はもう少し大きくなったら教えてくれるそうです。役割については、人魚は海の秩序を守っていて、その内容は多岐にわたり、道に迷ったイルカや鯨が浅瀬に行かないようにするのもその内の一つらしい。


午後からは自由時間。お姉様達から海の上の話を聞いたり、図書室にこもるか体力作り兼泳ぎの練習の為に屋敷の中を散歩するという生活。

アディは特に海の上の話を聞きたがったけど、私は人間だった頃の記憶がある分、こっちの文明は遅れてるなぁってぐらいしか思いませんでした。


初めの頃は、力尽きて廊下の隅で休憩しているところを、メイドさんや家族に見つかって抱っこで自分の部屋まで送ってもらってましたけど、今では屋敷の中なら充分に行動出来るほど体力もついたし、泳ぎ方も上達しました。


そして、今日からは魔法の練習です!

只今、お母様に魔法の基礎を教わっています。


《人魚には生まれつき魔力があり、水を思いのままに動かすことが出来ます。では、私が一度やってみるからよく見ていなさい》

お母様が右手を軽くふると、3メートルほどの大きな渦が現れた。


《最初は力が押さえられずに暴走してしまうことがあるから、十分に気を付けて。じゃあ、やってみなさい》


やってみなさいって言われても……。ねぇ?


アディに同意を求めるように顔をむけると、アディの前には彼女の身長よりも大きな渦巻きが出来ていた。


《上手よ、アディ。もう少し力を抑えるともっと上手くコントロールできるようになるわよ 》

お母様が微笑みながらアディを褒めている。


……おおぅ。さすが、アディ。生まれつき泳げてただけはありますね。じやあ、私も。


右手を前に出して、渦巻きよ出てこいっとイメージした。


……出ない。どうしてでしょうか?


小首を傾げて不思議がっていると、お母様が後ろから抱き抱えるようにして右手をとられた。


《サリア、お腹の真ん中に魔力があるのを感じられるでしょう?それに意識を集中させて、しっかりイメージしてみなさい》


言われた通りにお腹に意識を集中させると、今まで感じたことのない、温かくて力強いものを感じる。今度はそれをしっかりと意識しながら、頭の中に渦巻きを作った。粘ること約五分、掌の上に小さな渦ができた。


《お母様、出来ました!》

嬉しくて満面の笑顔で振り返る。お母様の顔には何故か微妙な笑み。


《頑張ったわね、サリア。魔力には個体差があるから、大きさは気にしなくていいのよ。練習すれば、もっと早く作ることが出来るから。これから頑張りましょう》

何故か励ますようなことを言われました。


……できが悪かったんですね。それも反応に困るほど。どうやら、私には魔法の才能はないようです。


それからしばらく、掌ほどの渦を作っては消し 作っては消しを三回ほど繰り返すと、 急激な倦怠感におそわれた。お母様に申告したところ体内の魔力を使いきってしまったとのこと。

アーディティアは大きな渦の三本めを作り出して、同 時に何本出来るか挑戦中。渦どうしがバチバチぶつかり合って、とっても怖いことになってます。


この差はいったい……。

とりあえず、今日から毎日練習ですね。目標は、基礎魔力の向上と力の使い方を把握する事になりそうです。


ため息を飲み込んだところで、今日の練習はお開きになった。

自分の部屋に戻りベットに横になると、夕食まで泥のように眠った。そのせいか、夜になっても眠れない。しょうがないから、本でも読もうかと思って、部屋をそっと脱け出して、図書室に向かった。

廊下を歩いていると、ドアが少し開いて明かりが漏れている部屋がある。お母様とお父様の寝室だ。


どうしよう、こんな時間まで起きてるのがばれちゃったら、また心配させちゃいます。


足音を忍ばせてそっと通り過ぎようとしたら、中から話し合う声が聞こえてきた。


《……は皆魔力が強いはずなのに、どうしてなのかしら。このまま強くならなかったらどうしょう》


《落ち着きなさい。子供なんだからまだ魔力が安定していないだけかもしれないだろ。それに君がそんなに心配していたら子供達にも伝わってしまう。結局、力が……》


聞いてはいけない話を聞いてしまったのかもしれません。やっぱり私に魔法の才能は無かったんですね。落ち込むと同時に、情けなくて泣きたくなってきます。


泳ぐのも下手だし、魔法も録にできない。そんなことも出来ないのかと、呆れられるのが怖い。

もし、前みたいに捨てられたらどうしましょう。


そう思うと目に涙がたまった。

思考が悪い方に回りだす。


泣いていても仕方がないですよね。私に出来ることは、要らない子にならないために、精いっぱい頑張ることだけ。明日から毎日一生懸命練習して、アーディティアと同じように出来るまで頑張ろう。


そう決心して、 そっと目尻にたまった涙を拭い、 暗い廊下を音をたてずに引き返して行った。




読んでくださってありがとうございました。今回は後半ちょっと重かったですかね?

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