表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

7.通路1-B

 中央の通路を進むのは、メガネの男とブレザーの男。

「彼女、かなりの怪我をしていましたけれど」ブレザーの男が言った。「刑事が随分とひどいことをしたんでしょうか?」

「ああ」メガネの男が答えた。「内容はだいたい想像がつく」

「いったいどんなことを……?」

「留置所の地下は薄暗くて誇りっぽい。石壁に囲まれていて、音が通らない。妖怪専用の取調室とされているが、独房、と言えばまだいいもので、実際は拷問部屋だ」

 ブレザーの男がごくりとつばを飲み込む音がした。

「まず、狐の両腕を鎖で拘束して吊るす。拷問に使うのは、先を犬の唾液で湿らせた針だ。それは元々はただの針にすぎないのだが、知っての通り犬は狐の天敵だ。それで突かれると、もちろん突かれることそのものも痛さもあるが、狐にとってはそれ以上に、生理的な嫌悪感を催すらしい。例えば、潰れたゴキブリのはらわたを肌に擦り付けられるとでも考えれば、気持ちも分かるか? その針を狐の腕や顔に突き刺してやる。もちろん狐は酷く顔を歪める。大声で呻き、罵声を吐き、呪言を唱え、容赦を願う。けれど、狐の奴は、マゾヒストかと思うくらい、なかなかに我慢強い。だから、刑事たちも執拗に責める。馬鹿が針を突きすぎて、殺しやがったこともある」

「詳しいんですね」ブレザーの男が言った。

「ああ」メガネの男が言った。「同業だからな」

「つまり、あなたが新しくここへ来た刑事?」

「そう」

「随分と気軽に明かすんですね」

「俺が警戒しなくてはいけないのは九尾狐だけだ。妖怪狐は、この、犬の唾液で湿らせた針があれば怖くはないからな」

 刑事はそう言って、スーツの内ポケットから革のケースを半分抜き出して、ブレザーの男にちらりと見せた。

「お前は九尾狐じゃないよ。あの妖怪狐が言っていただろ、俺が情報屋として使っている蛇がいるって。あいつは目がいいんだ。どいつが九尾狐が化けた姿なのか、アイコンタクトで教えてくれたよ。で、それはお前じゃなかった。それなら何も怖くない。質問されたら知っている範囲で答えるさ」

「じゃあ、もう少し質問してもいいですか?」ブレザーの男は言った。

「ああ、いいぜ」

「あなたの話だと、狐が人間に化けた姿のまま拷問しているようですが、それはなぜですか?」

「ん、ああ。狐の変化の持続時間は妖力によるらしい。短くても数週間、たいてい、ひと月は続く。満月の時期は妖力が高まるから、変化の期間も長くなるという。変化はいつでも任意にできるらしいが、地下や窓のない密閉された部屋では、月の力が取り入れられずに、変化ができないらしい。つまり、地下で監禁されている限り、狐の姿なら狐のまま、人間の姿なら人間のままだ」

「でも月の光を浴びせれば元に戻るのですよね? なぜ、人に化けたままにしておくのです?」

「きっと、そのほうが拷問が楽しいからだろう」

「あなたも手を出したことがあるのですか?」

「いや、俺は手出ししていない。ただ、見ていただけだ」


■□■□■□ NOTICE ■□■□■□

 メガネの男/刑事

 髪留めの女/九尾狐

 オールバックの男/?

 ブレザーの男/?

 白シャツの女/?

 傷だらけの女/妖怪狐

■□■□■□■□■□■□■□■□■□

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ