3.メンバー
「ここに来たときの記憶がある人はいるのかしら?」髪留めの女が質問した。
「曖昧だな」オールバックの男が言った。
「ぼんやりとしています」ブレザーの男が言った。
「気がついたらここにいたという感じです」白シャツの女が言った。
「えてして結界に取り込まれたばかりというのはそういうものだ」メガネの男が言った。「ただ、ひとつ言えるのは、どうやら我々は、留置所からこの結界に落とし込まれたようだということだな」
それらの会話を聞いていた傷だらけの女が話し始めた。
「こうしていても埒があかない。私が状況を整理してやろう」
「あなたにはこの状況を説明できるっていうの?」髪留めの女が聞いた。
「ああ。私は留置所の地下に捕らわれていた。そう言えば、私の正体が分かるものもいるだろう」
しばらく他の五人は黙って傷だらけの女をしげしげと眺めていた。
「ふうん、するとお前が狐か」オールバックの男が言った。
「もしかすると、その怪我は……?」白シャツの女が言った。
「ああ、刑事どもにやられた」
傷だらけの女は腕を掲げて傷跡をみんなに見せた。どうやら留置所に捕らわれていた妖怪狐というのは、彼女のことのようだ。
「さて、お前たちの正体も暴いてやろう。私を拷問した刑事どもの話から、結界が発動したと思われる時間に、留置所の地下にいた訪問者の想像がつく」
誰かがつばを飲み込む音がした。
「誰がこの結界を作ったのかはわからないが、私にはこの状況は好機だ。私はこれを機に刑事どもから逃げ出したい。しかし、まずこの中に一人、私と面識はないが私を尋問するために新しくやって来た刑事がいる。そいつは私を逃がしたくないはずだ」
一人は刑事。妖怪狐は続ける。
「けれども、私を助けに来た華陽婦人の九尾狐も、人間に化けてこの中に紛れている。私にとって味方となる存在だ」
一人は九尾狐。妖怪狐は続ける。
「ただ、九尾狐にとってはまずいことに、刑事どもが呼んだ探偵がこの中にいるらしい。奴は九尾狐と剣技で渡り合うことができるほどに強く、九尾狐を捕らえようとしている」
一人は探偵。妖怪狐は続ける。
「それから一人、厄介な奴が混ざっている。新しい刑事が情報屋として使っている蛇だ。つまり一人は蛇が化けた人間だということになる。」
一人は蛇。妖怪狐は続ける。
「実は一人だけ、正体が分からないやつがいる。結界の数合わせにねじ込まれた、誰かの連れだろうか?」
一人は誰だか分からない。妖怪狐の話は終わった。
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メガネの男/?
髪留めの女/?
オールバックの男/?
ブレザーの男/?
白シャツの女/?
傷だらけの女/妖怪狐
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