接触の儀① 手握りの儀
グッと、ジョッキの中身を飲み干して、俺は言った。
「俺の小説を出版してくれたら、代表引き受けるぜ」
(酔った勢い、怖いもんねぇ)
サシバ首相は、その瞬間、さっとその場に、土下座した。
「分かりました、防衛費で出版して、買い上げ、全世帯に配布いたします。
日本の世帯数は現在6127万994世帯なので
ベストセラー、竿木賞、間違いなし」と首相が叫ぶ。
(竿木賞、悪くねぇ、俺、ニヤリ)
そこで、ヨコ・ヒロシが重々しく言う(似合わねぇ)。
「では、ナーン星人様、ご希望をおっしゃってください」と、ヨコ。
「ナーン星人は礼儀正しうござる、相手方のやり方を重んじるのでござる」
「さすが。ナーン星人様」と、ヨイショのヨコ。
「わが星の、外交のガイドブック『地球との外交の基本』
に則り、友好を深めたい」
「まずは、『接触の儀』からでござる」
「ガイドブックP10に、
『地球では、初対面のあいさつには、手握り、抱き 合い、口吸い等の身体の接触から始まること多し。』とある」
「手握りから、やりとうござる」
「ちょっと、待て、マンボじゃねぇ、ナーン星人さんには手がねぇじゃねぇか、どうすんだい?」と、俺。
「大丈夫でござる。手を出して、握ってくだされば、
ヒレが(自分でヒレって言ってるじゃねーか)、その形になりモウス」
一瞬、俺がビビると、また、サシバ首相や世界中から
「ガンバレ」、「たのむ、やってくれ」、「やらんと〇〇すぞ」まで
激励と恫喝の嵐。
俺は、今や、世界中に顔を知られ、ベストセラー作家の座も約束された。
(逃げられっこねぇ、やってやるか、一か八か、来村一八、決心決めた)
マンボウが胸ビレを差し出す。そこに手を持っていく。
ムニュ(いやな感触だ)、俺の手が胸ビレの中に、
ズル、ズルズルッと吸い込まれていく。
はっきり言って気持ち悪い、
固まっていない、くずまんじゅうの中に手をつっこんだみてぇだ。
思わず、「デヒャー」と叫んで逃げ出したかったが、
全世界に同時中継され、かつ全世界の期待が俺の肩にかかっている。
俺は、作り笑いをしながら、「ようこそ、地球へ、ナーン星人さん」
とやっと言うことができた。
「ブラボー」、「ビエンベニード」、「ウエルカム」、「インクレリブレ」
多分、歓迎と感激の言葉?が
雨、あられと俺たち二人?に降り注ぐ。
俺の、右半身は、できかけの、くずまんじゅうから出てきたみたいに
ドロドロのズブズブのベロベロだ。
マンボウは言った。「第二の儀式もあるので、『抱き合い』は残念ながら
省略、『接触の儀』のハイライト、『口吸い』に進みたくそうろう」
「まだ、あんのかい?」(俺、もういやになっている)
♪まだ、まだつづく ながい いっぽんみちは♪




