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白亜の天使様は離さない。  作者: mukakinoji_


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第二十五話 番外

 1月1日。

 元旦。

 新しい年の始まり。

 結城家は、朝の光に満ちていた。

 新年の空気。その中に、期待と、同時に別の感情も混在していた。

 颯太は、目を覚ました。

 その瞬間、昨年のすべてが、脳裏に浮かんだ。

 夏祭り。蓮のキス。凜の倒壊。病院での反抗。そして、結城家への受け入れ。

 高1のこの数ヶ月。それは、颯太の人生を大きく変えた。

 颯太は、床から起き上がった。

 家の中は、新年仕様の装飾で満ちていた。

 しめ飾り。鏡餅。正月飾り。

 すべてが、由美と蓮、そして凜で準備されたものだ。

 居間に降りると。

 そこには、すでに家族が集まっていた。

 蓮。凜。美月。由美。

 そして、父親の健一も、朝から家にいた。

「新年おめでとうございます」

 蓮が、颯太に言った。その声は、アイドルとしてのそれではなく。家族の一員としてのそれ。

「新年おめでとう」

 凜も、続いた。その声は、冷たく聞こえるかもしれないが。その目には、複雑な感情が映っていた。

 由美が、雑煮を用意していた。

 その香りが、居間全体に満ちていた。

「では、新年の朝食をしましょう」

 由美が、皆を集めた。

 朝食のテーブルに、全員が座った。

 颯太。蓮。凜。美月。由美。健一。

 六人が、一つのテーブルに。

 朝食は、新年仕様だった。

 雑煮。お節料理の一部。焼き魚。

 由美が、数日前から準備していたものだ。

「では、新年を祝いましょう」

 健一が、言葉を紡いだ。

 その言葉は、父親としての深さと、同時に別の感情も含んでいた。

「昨年は、この家族に大きな変化がありました。蓮が戻ってきた。凜が加わった。その中で、颯太も成長しました」

 健一の言葉は、正確だった。

「これからも。この家族で。一緒に歩んでいきましょう。新しい一年。新しい時代へ」

 その言葉に、全員が頷いた。

 朝食が進む中で。

 蓮は、颯太を見つめていた。

 その目には、何かが映っていた。

 昨年のこの時点では、蓮と颯太は出会っていなかった。

 だが、今。蓮は、颯太の隣にいる。

 その時間の流れ。その変化。

 蓮は、それを噛み締めていた。

 凜も、窓の外を見つめていた。

 昨年のこの時点では、凜は「学園の聖女」で、颯太は「隣の席の人間」でしかなかった。

 だが、今。凜は、颯太の複雑な感情の中心にいる。

 その変化が、凜の心に何をもたらすのか。

 凜は、それを考えていた。

 朝食が終わった。

 健一が、颯太を呼んだ。

「颯太。来なさい」

 その言葉に、颯太は父親を追いかけた。

 父親は、書斎に颯太を連れていった。

「昨年は、お前も大きく成長したな」

 健一が、言った。

 その言葉は、単なる褒め言葉ではなく。親としての観察の結果だった。

「蓮と凜。二人から好意を向けられて。お前はどう感じている?」

 健一の問いは、直接的だった。

「正直に。自分の気持ちが、分かりません」

 颯太が、答えた。

「そうか。では、今年の目標は。自分の気持ちと向き合うことだ」

 健一の言葉は、深かった。

「親としては。お前がどちらを選んでも。受け入れる。だが、その前に。お前自身が。自分の心と向き合う必要がある」

 その言葉の中に、親としての責任と、同時に子への信頼が込められていた。

 颯太は、その言葉を胸に刻み込んだ。

 昼。

 三人(颯太、蓮、凜)は、初詣に出かけることになった。

 隆之介と雫も、一緒だった。

 五人で、近所の神社に向かう。

 その途中で。

 蓮は、颯太に話しかけた。

「そう……ちゃん。新年のお願いは?」

 蓮の問い。

「まだ。神社でしよう」

 颯太が、答えた。

 凜は、その会話を聞きながら。何かを考えていた。

 颯太は、新年のお願いで、何を願うのか。

 蓮か。凜か。

 それとも、別の何かか。

 神社に到着した。

 五人は、参拝の列に並んだ。

 隆之介と雫は、二人で参拝をした。

 その時。

 隆之介は、雫に話しかけた。

「お前は。何を願ってるんだ?」

 隆之介の問い。

「それは。秘密です」

 雫が、答えた。その答えは、曖昧だった。

 だが、その目には、何かの決意が映っていた。

 それが何なのか。隆之介には、その時点では分からなかった。

 颯太と蓮。凜は。

 それぞれ、順番に参拝をした。

 颯太は、目を閉じた。

 その目の前に。蓮の顔。凜の顔。

 二人が交錯する。

 どちらを選ぶべきなのか。

 颯太は、その問いの答えを、新年のお願いとして神様に委ねた。

 蓮は。

 目を閉じて。

 颯太とずっと一緒にいられますように。

 その想いを、神様に託した。

 凜は。

 目を閉じて。

 颯太を絶対に手放さない。

 その覚悟を、神様に誓った。

 参拝が終わった。

 五人は、神社の境内で、少し時間を過ごすことにした。

 隆之介が、缶コーヒーを買ってきた。

 そのコーヒーを飲みながら。

 五人は、新年について話した。

「今年も。修羅場かな」

 隆之介が、茶化すように言った。

 その言葉に。

 颯太は、何も言えなかった。

 蓮は。微かに微笑んだ。

 凜は。表情を変えなかった。だが、その目には、何かが光っていた。

 雫は。隆之介を見つめた。その目には、複雑な感情が映っていた。

 夜。

 結城家に戻った後。

 由美は、お節料理を用意していた。

 新年の夜。家族で、お節を食べるという、日本の伝統。

 テーブルに、すべてが並べられた。

 黒豆。数の子。田作り。栗きんとん。

 その他、多くの料理。

 六人が、テーブルについた。

 新年の最初の夜。

 由美が、言葉を紡いだ。

「昨年は、この家族に大きな変化がありました。蓮の帰還。凜の加入。その中で。皆が成長しました。今年も。皆で。一緒に歩んでいきましょう」

 その言葉は、母親としての深さを持っていた。

 全員が、頷いた。

 食事が進む中で。

 颯太は。蓮と凜を交互に見つめた。

 その視線の意味。

 蓮には、それが何なのか分かっていた。颯太が、自分と凜の間で揺らいでいることを。

 凜も。その視線を感じていた。

 そして。その中に、自分への何かを感じていた。

 だが、それが何なのか。凜には、完全には理解していなかった。

 夜中。

 颯太は、自分の部屋で。新年の夜を考えていた。

 父親の言葉。「自分の気持ちと向き合うこと」。

 その言葉の重さ。

 颯太は、それをどう実現するのか。分からなかった。

 蓮への10年分の想い。凜への3ヶ月の積み重ね。

 その両方が、颯太の中に存在していた。

 そして。颯太は、その両方を失いたくないという、本音も持っていた。

 だが、それは、許されない選択なのか。それとも、可能な選択なのか。

 颯太には、その答えも分からなかった。

 窓から、新年の夜空が見えた。

 星が、清く輝いていた。

 1月1日。新しい年の始まり。

 その中で。

 颯太は。蓮は。凜は。

 それぞれの願いを抱えながら。

 新しい年を迎えていた。

 結城家の新年は。静かに。深く。進んでいった。

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