パートタイマー勇者 ③「求人募集に興味を持つ」
ひとりの男が職安の求人募集を見詰めていた。
男は、おっさんと呼ばれるのが相応しい年齢で有り、前の会社では、十数年勤めていたが[ 無能、穀潰し ]と陰口を言われ続け出世する事もなく、先日リストラされたばかり、ここ暫くは職安の紹介により何社か受けたが、悉く断られている。
今回も、ビクビクしながら例の募集カードを持ちながら、職員に尋ねた。「特別相談室 加美さんは、いらっしゃいますか。」
職員は、「担当の加美ですか、特別相談室に居りますので、右の通路突き当たりのドアにお入り下さい。」
おっさんは、言われた通りのドアを叩いた。「どうぞ。」の声を聞き、ドアを開け中に入ると 少しの立ち眩みを感じてたが、正面に座る若い女性を見て、踏ん張りを利かせ立て直した。
女性は、「ようこそ。特別相談室へ 私は担当の加美と申します。[ パートタイマー募集 ]に付いての相談で宜しいでしょうか。」
おっさんは、少し顔を赤らめながら「お願いします。」
「では、簡単にお仕事の説明を致します。宜しいでしょうか。まずは、席にお座り下さい。」
おっさんは、担当前の席に座りペン片手に聞く姿勢になる。
「説明の前に三項目の質問が有ります。正直に答えて下さい。
第一問ですが、
今、貴方の前に財布が落ちてます。どの様な対応をしますか?
①警察に届ける。
②猫ババする。
③その他。」
おかしな質問である。おっさんは暫く考えて、③と答えた。
理由を尋ねられて、「今の生活状況から考えると、1000円位なら猫ババするかも知れない。それ以上なら、恐くて警察に届けます。」
「ありがとうございます。では、第二問 です。貴方の目の前に足にケガした美女がいます。しかし、反対側に川に溺れている老人がいます。貴方の取る行動は、正直に答えて下さい。
①美女を先に助ける。
②老人を先に助ける。
③誰も助けないか、別の事を行う」
おっさんは、迷う事なく②と答えた。
「ありがとうございます。最後の問題です。
貴方の家族構成を教えて下さい。」
「田舎に老いた両親と妹家族が居ります。」
「ありがとうございました。以上で質問は終わります。
そして、紹介が遅れて申し訳御座いません。私 加美は、今回のパートタイマー募集に着きまして面接官を委託されており、今回のやり取りで面接終了となります。結果は、合格と致します。」
「本当ですか!ありがとうございます。何時から勤務すれば宜しいのでしょうか?」
「明日の午前11時に、この部屋来て頂けますか、その際に詳細を説明致します。」
「宜しいお願いします。」
おっさんは、職安を後にした。
足元は、少しだけ軽やかだった。