死なないでね。待っているから
「元気だった?」
「俺は元気だよ。・・・だがな、17世界の彼奴が敗れて、大怪我で今回の大会に出れないそうだ。出席を楽しみにしてたのになぁ。」
「そうか。俺も会えるのを楽しみに来たんだが、残念だよ。」
「彼奴には伝えておくよ。」
「頼んだよ。」
所々で交わされる挨拶と他愛な無い会話が、各異世界に召喚された勇者達の意見交換と同じ境遇で戦う同士達の連帯感の現れで有った。
異世界に一人で召喚された勇者は、強い力を与えられたが、何も知らない異国の地にひとりで放りまれた様なもの、心細くて最悪は精神に異常をきたす者が少からず発生した。
それを憂いた女神連合が、1年に1度の1日だけの【勇者大会】を開催して、各異世界に召喚されている勇者達を集めた慰労会を開いていた。
【勇者大会】は、各勇者の交流と【くじ引き】を開催していた。
特等は、【新たなスキル賦与】
一等は、【エリクサー】
二等は、【聖なる武器または防具】
等々、各女神様がかき集めたアイテムを揃えている。
また、各勇者が所有しているが、不要なアイテムの交換会も開かれていた。
そして、楽しかった【勇者大会】も終わった。
「死ぬなよ。また、来年も会おうぜ。元気でな。」
「お前も、元気でな。」
所々で別れを惜しむ会話が交わされるが、ひとり又ひとりと勇者は、自分を待つ世界に帰って行く。
大会が終わり、後片付けにてんてこ舞いの女神様や天使達の心に、静かな風が吹き抜ける。
誰かが、ポツリと呟いた。
「みんな。死なないでね。また、来年も待っているから・・・・ね。」




