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静かに世界は生きている  作者: 南悠


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悲しき希望

彼は異世界に召喚されたらしかった。


気が付けば石畳の大広間に立っていた。

彼を見下ろすかの様に、豪華な衣装を纏い座っている王と護衛の屈強な騎士たちが、周りを囲んでいる。

脇では、息絶え絶えに喘ぐローブ姿の魔法使いたちの姿が見える。


宰相と名乗る男が、彼の元に歩み寄り、急な召喚を詫びながら、魔王軍の猛攻に喘ぐ、王国の現状と助けを願ってくる。


彼は、暫くの沈黙の後で渋々と承諾せざるを得なかった。


翌日から剣術と魔法の訓練が始まり、彼のレバルアップが始まった。


草原・ダンジョン・魔王軍との軽い小競合いと

訓練の度合いが高まり、そして彼は勇者として旅立った。


当初、彼は魔王軍との戦いに度々参戦して、敵を蹴散らす働きを示したが、頭の固い軍首脳部との意見違いから対立から殺傷事件に発展して、飛び出さざるを得なかった。


王国から追放され、行く宛すら無く、さ迷う男。


幾つかの国や地域を経て、この世界をただ歩き回っていた。


ふと、彼はある事に気が付いた。

何故か、この世界が地球によく似ていることに。


食事、言語、文化等の面で、何処か見たような聞いたことの有る様な錯覚を感じることに。

ただ、文化程度は地域に依っては、欧州中世時代と遅れは気になるが・・・。


そして、彼は地の果てと呼ばれる荒廃した地に、導かれる様にたどり着いた。


荒れた地は草木も疎らで、魔物も生き物すら見掛けない荒廃の大地。


この先に、何かが有るとの直感を信じて歩いた。

荒廃した大地は、一面の荒れ地で所々に大きな岩が転がっていた。


岩の丘を越えて、見えた物は、遥か先に崩れ欠けた赤いペンキの剥げ欠けた鉄骨の骨組み。

・・・それは東京タワー?

彼が見慣れた存在が、朽ち掛けて存在した大地。


彼は、希望が打ち砕かれると共に確信した。

ここが、遥か未来の日本である事を・・・。





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