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静かに世界は生きている  作者: 南悠


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復讐の魔法剣士 ①

俺は、辺境の地で静かに暮らしている。

食うに困らないだけの農地と伴に暮らす家族が、俺の今の生き甲斐だ。


かつての俺は、魔法剣士として勇者と共に戦った。

巨大な魔物を倒し、魔王軍を打ち破る勇者を手助けして戦ったと自負している。

だが、勇者のヤロウは、魔王軍の突然の夜襲による惨敗原因を、俺に擦り付けて王に報告しやがった。直ちに王都への帰還命令が下った。

ニタニタと笑う勇者と目を伏せて押し黙る仲間達に嫌気がさして、俺はその夜に逃亡を計った。

そして、直ぐに俺の追討令が発っせられた。


俺は、逃げる様に魔森林に逃げ込み、彷徨いながら時を稼いだ。

顔を焼き、姿を変えて、ただ時が過ぎ去る事のみを信じて暮らした。


やがて、三年の時がたち、姿形を変えた男は、様子見に辺境の町のギルドに寄ってみた。

昼間から酒場でくだを巻く男たち。

依頼報告に来たの様子の若い連中は、動きに切れが有り、好ましく感じる。

「あぁ。懐かしいな。」とかっての仲間と自分がが映って見えそうだ。


俺は、酒場に腰掛けて、聞き耳を立てながら、バーテンから、最近の情報を買い取った。


案の定、俺の手配は解かれてはいなかったが、最早廃れた案件と見られている様で、少し安堵した。ただ、勇者連中で耳よりの情報が聞き取れた。


俺の抜けた穴を他の剣士で埋めた様だが、余り芳しく無い様だ。まして、魔王軍との戦闘が激化しており、勇者の怪我を皮切りに、他の連中の中でも戦死や重傷で離脱が相次ぎ、勇者パーティーとしての活動に支障が出ている事から、近くメンバーの募集が行われるらしい。


あの頃の俺とは、今の俺はかけ離れている。

顔に大きな火傷跡が残り、声は潰れて左足は軽く引き摺る様に歩く。だが、隠れた間でも訓練し続けた剣技は、我流が混じりながらも衰えず、更に鋭くなったと自負する。


俺は、名を変え、勇者パーティーのメンバー募集に望んだ。

大広場に集まる幾十の強者どもに混じり、壇上に座る、かつての連中の顔を見詰める。

【勇者】【聖女】【賢者】【タンク】と懐かしはと悔しさが入り雑じり、空を見上げて耐えた。


大まかに固まりを作り戦い合う事で、人数を絞り、勝ち抜いた少数でトーナメント方式で戦いが繰り広げられた。


足を引き摺る俺に、連中は狙いを定めて襲い掛かるが、俺の前に立ちはだかる者は無く、トーナメントに駒を進める。


トーナメントも多少の骨が有る奴も居るには居るが、俺の敵では無く、軽々と栄光を勝ち取った。


奴らの前に立つのが、かつての仲間だった魔法剣士で、陥れた男とは気が付かない勇者は、自らが言葉を掛けて、勿体ぶらせた口調で、仲間になれと命令する。


俺は、丁重にその命令を受けて、再び 勇者の横に立つことが許された。


新メンバーながら、見た目が悪いとの勇者の一言で、王前を立つ事は許されず、遠くで見詰める俺の身中は、怒りと悔しさが混じる複雑な心持ちだが、かえって変な情を持つ事もなく、スンナリと復讐が出来る事だけは、勇者に感謝した。



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