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悲しき囚人の言葉
あの日から、どれだけ経ったのだろう。
今では、あの日々が懐かしく思えてしまう。
突然の召喚により、訳も分からないままで、異世界での戦闘に巻き込まれた。
訓練と戦闘の日々。
不味い食事と楽しかった仲間との時間。
苦しい魔王との戦いと終焉。
歓喜の中の王都凱旋。
華やかな祝賀と変わらない帰還の願い。
涙の別れと帰って来たとの喜びの深さ。
戻って来た俺は、召喚前と同じ時間からまた、生活が始まった。
勉強に追われ、他愛な無い友人との会話に虚しさを感じる日々。
【他人を蹴落として成り上がる醜い競争社会。
以前の俺は、これに何の躊躇いも無く、溶け込み矛盾を感じてはいなかった。】
しかし、召喚の名残として、単に能力値が上がっただけでは無いだろう。・・・きっと、あの世界を知った為かも知れない。
だが、もう戻れる事は叶わない。
後悔は、静かに俺の心を蝕んでいく。




