依存症
勝ち負けは、時の運である。
1人の男が召喚された。
彼は粘着性質で、直ぐにカァーとなる性格であり、その事は、本人も自覚しており自制する精神力を持ち合わせていた。まして、ギャンブル依存症のオヤジを見て来た事から、自らギャンブルを遠ざけ、慎ましい生活をおくっていた。
しかし、突然の環境の大変化に彼の精神の咎が外れて、ムクムクと本来の性格?いや、性質が表に出始めてきた。
だが、その性質はギャンブルでは無く、戦闘に向かった事は、異世界にとっても喜ばしい事では有った。
彼は、騎士団との戦闘訓練を終えて、経験値獲得と実施訓練を兼ねた魔物との戦闘で、強烈な快感を感じ、その快感を求めて、更に魔物を倒していく。
付き添いの騎士は、彼の戦闘への忌避が無いこと。ましてや、魔物解体が直ぐに慣れて、テキパキと動く事に驚きを隠せなかった。
その後は、彼は気の合う仲間とパーティーを組み、率先して魔物退治を行い、勇者としてのレベルアップを成し遂げていく。
しかし、彼は気付いた。魔物を倒して得る快感が徐々に薄れて行くことに・・・そしてたどり着いた。より強い魔物を戦い、そして破る事で、かっての快感を得れることに。
彼は、やり強い魔物を求めた。だが、やがてそれも限界が有った。
それは、単純に彼は格下には勝てても、格上に勝てない事である。
しかし、格上の魔物に負けて、次には格下の魔物を倒した時に、再び快感が体中を走る。
「そうだ、負け続けた後に勝つ。このカイカン!」
彼は悟った。
【格上と戦って負けた後に、格下で勝つ】事を。
その後は、順調にレベルアップしたらしいが、
彼にとっては、魔王を倒す事が目的では無くなったらしい・・・