祭りの後に・・・
「勇者さま!王国を助けて下さい。勇者様が最後の頼りとなります。あなた様しか魔王軍を破れる方はおりません。お願い致します。」
王を中心として、宰相・諸々の貴族たちが、土下座をして助けを求めている。
俺は、何か得たいの知れない興奮が体中を駆け巡っているのを感じた。
「俺がやらねば!俺は勇者だ!勇者はヒーローなんだ!・・・俺しか出来ない!」
窓越しに歓声が響く。
「王国民が俺に、勇者に、王国の命運を託している。期待に応えれるのは勇者である俺だけなんだ。」
興奮が更に興奮を招いて、皆の期待以上の力がたぎってくる。
民の歓声は、勇者にそして将兵に伝わり、士気が沸騰するのを皆が感じている。
「勇者を先陣に魔王軍を破るのだ!」
怒髪天を衝き、快進撃が此処から始まった。
士気の高まりは、友軍にも伝播して、各地から勝利の報が絶えること無く王都に伝えられた。
魔王軍は成すすべも無く、各地で破れて敗走する。そして、最期は、魔王城で勇者の手により破れた。
王都は、大歓声で勇者と王国軍を迎えた。
勝利の美酒は、全ての人々を酔わせて、興奮の坩堝と化して、更に熟成させた。
王は、上機した顔つきで、
「王国の救世主たる勇者には、王女を娶らせて、公爵に任じる。」と約束した。
人々は、「もう、魔王軍を恐れる事無く、夜を眠れる。」と喜び合っていた。
王都中が、酒を浴びる程に呑み尽くしていた。
しかし、二日酔いの覚めると同時に、徐々に皆の興奮は冷めていき、疲れきった人々による普段の生活が静かに始まりはじめていく。
城内の興奮も、静かに冷め始めて、それに伴った人々は、疲れきった表情で授爵式を行い【勇者に伯爵位を与える】とトーンダウン。
勇者も興奮から冷めて、無気力・無表情で怒る事無く、受けていた。
祭りが終わりを告げていく。
興奮に満ちた、あの日々は終わりを告げた。
後は、ただ無気力のつまらない平和と言う、日常が続くだけだろう。