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魔性の歌声
魔王軍との戦いは硬直状態で止まったままだった。
魔法攻撃には、魔法で対抗し、一騎討ちでも五分五分の引き分けとなり、奇襲攻撃も裏を掛かれて大した被害も出ていない。
兵糧攻めは、豊富な物資を持ち込み又、輸送も完璧な守りで効をなさない。
お互いが手の内おうが無い状態だった。
ある日、魔王軍は突拍子も無い作戦に出てきた。
魔物をセイレーンによる歌声による精神攻撃、眠りを妨害された事により、将兵は疲れている。
対策をやって見たが、【耳栓】【催眠魔法】等々、様々に講じるが効果なし。
困り果てた勇者の脳裏に、ふと浮かんだ対策は、余りにも馬鹿馬鹿しかったが、もしやと思い実行してみた。
何時もの定時刻に流れる歌声が始まると勇者はある物を片手に持ち鳴らした。
【カ~ン】
ひとつのカネの音が陣地に広がる。
途端に、セイレーンの歌声は【チェ】と舌打ちと共に止まった。
「あーぁ。この世界でも通用するのかな」と勇者は胸を撫で下ろした。