派遣職業斡旋所
街角に密かに開店している店が有る。
【派遣職業斡旋所】全ての人が、そこを利用出来る訳では無いらしい。
なぜなら、その存在を認識出来る人と出来ない人がいるらしい。
そこを認識出来る人は、どの位いるのか、また、何故認識出来るのかは、一切不明であるが、
何故か、俺はその存在を認識出来た。
初めて、その店を見付けたのは、三年前に遡る。
突然の解雇で、自棄になり、友人と酒を浴びるほど飲んだらしいが、記憶が途切れとぎれでよく覚えていなかったが、深夜に街角で明かりが灯る店を覚えていた。
その後は、仲間と若しくは一人で酔っては現実を誤魔化していた。
ある日、何故かその店が気になり、「ヤバい店かな」と警戒しながら入店した。
店の中は、入ると直ぐ左手に数客のテーブルが並び、右手奥にカウンター、そして美人のお姉さんが一人。まるで酒場の様だが、誰一人として居ない奇妙な店だった。
酔った勢いもあり、お姉さんに近付くと、お姉さんはニッコリと微笑みながら、
「ご登録でしょうか。それとも買い取りでしょうか」
不意の言葉に戸惑いながら、「此処はどの様な店なのでしょうか」と聞き返した。
お姉さんは、嫌な顔ひとつせずに、
「此処は【派遣仕事斡旋所】です。仕事をご希望の方に、派遣仕事を短期・長期に係わらずに斡旋しております。ただ、派遣には当店にご登録をして頂く必要が有ります。どう致しますか。」
今は無職の俺は、何故か迷うこと無く、登録を行った。
お姉さんの出した用紙に氏名と住所そして携帯電話の番号とメールアドレスを記入した。
続いて、直径20cm位の水晶玉にてを翳す事を言われ、言われた通りにてを翳すと、淡い光が自然と水晶玉に灯って静かに消えた。
お姉さんは、ニッコリと微笑みながら、
「登録は無事に終了しました。これから、当店の説明を致します。よろしいでしょうか。」
「ハイ お願いします。」
「当店は、登録された方々にランクを設けており、ランクに応じた仕事を斡旋しております。
ランクは、
【E】の見習
【D】の初心者
【C】の初級
【B】の中級
【A】の上級
の5段階に分かれており、各ランクでの達成率・成功率 等に応じてランクは上がります。
また、ランクが上位にいく程、報酬も上がるシステムとなっております。
斡旋します仕事内容は、後方の掲示板にランク別に貼り出しておりますので、自分のランクに応じた仕事を探して、カウンターの受付けに提出して下さい。また、仕事中で入手しましたアイテムや諸々に付きましては、彼方の【買い取り】カウンターで査定を行い、応じた金額より、手数料10%を引いた金額をお渡し致します。
なお、当店内でのトラブルは、そのトラブルに応じた罰則が課せられますので、ご注意をお願い致します。
詳細は、この小冊子をお読み下さい。
今回は、何か仕事をお受け致しますか?」
咄嗟の事と酔った頭での仕事は止めた方が良いとの判断で、今日は帰る事にした。
店を出ると、何故か疑問に思うことも無く、自然と受け入れる自分が居る事に、妙な納得をして家路に帰った。
ひがしの空は僅かに明るさを灯し始めていた。