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男のロマン

王国に一人の男が召喚された。

男は、高い能力と多くのスキルに恵まれており、勇者と絶賛された。


男も日本では、ラノベ小説を好んで読み、【もし、自分が召喚されたら・・・】と妄想する事も多々有った為、今回の召喚には、本人としてもウキウキして満足感が、顔に滲み出る位に内心は喜んでいる。


昨夜は王家からの歓迎パーティーで異世界の料理と酒を堪能して就寝した。

いよいよ、今日から勇者としての訓練が始まる。


男は、満面の笑みで指定された訓練所へ、弾む足取りで向かう。


午前の剣術訓練で心地良い汗をかき、午後からは待ちに待った魔法の訓練が始まる。

女神様より与えられたMP値はふんだんに有り、魔法のスキルも与えられていた。

当然に魔法は使えるモノとふんでいたが、簡単な生活魔法すら出来ない。


「何故だ?何故なんだ?

ラノベ小説で言えば、魔法は花形ではないか?」


男にとっての魔法は、憧れて有った。

主人公たちが、魔王に打ち付ける【上級魔法】【極大魔法】・・・。

華やかな見せ場となる筈の大きな期待が・・・


鑑定士曰く、

「魔法のスキルを多く与えられておりますが、肝心の【魔法の素質】が見当たりません。

申し訳ないのですが、魔法を使うことは諦めて下さい。」


男は茫然と立ち竦んでしまった。

魔法が使えない。

憧れが使えない。

俺のロマンが・・・。

何のために此処に召喚されたのか?





男が勇者として立ち上がるには、もう暫く時間が掛かる事だろう。


耳元で

「ごめんね。」と小さな囁き声は、男の耳に届かなかった。




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