ある冒険者のはなし 6
ダンジョンは異世界にとっても不思議な存在である。
ダンジョン自体が魔物とか、別次元に繋がっているとか・・・。
誠しなやかに冒険者の間では、語られている。
これは、ある冒険者の不思議な体験である。
彼らはA級ライセンスを持ち、数々のダンジョンを踏破した経験を持つベテランで有る。
今回も、ある小さなダンジョンを踏破した時、最下層の部屋の片隅に、小さな鍵穴が有る事を見つけた。
もしや、秘密の小部屋かと期待が仲間達の間に高まる。しかし、鍵穴に入るカギが無い。
扉をハンマーで叩き付けるが壊れない。
魔法使いか、色々な魔法をぶつけるが駄目だ。
盗賊が、カギ開けキッドを使うが、開く気配すら無い。
その後の数日間は、あの手この手を使うが無理であった。
名残惜しが手持ちの食糧が尽き欠け、リーダーの撤退宣言で町に帰る事となった。
帰り間際に剣士が、ふとした行動にでた。
振り向き様に土下座?どうしてなのか、剣士にも解らなかった。
何故か、土下座をしなければ成らないと心の声が聞こえたらしい。( 本人談 )
突如、そしてゆっくりと扉は開き始めた。
中は長い通路が確認出来る。
剣士は、仲間と共に扉を超えて、通路を警戒しながら進んで行った。
どれだけ歩いただろうか。
魔物も罠も確認出来ない通路は、僅かに照らす松明の火だけがユラユラと影を壁に映している。
緊張と警戒感で、精神的に疲れきった頃に、盗賊が少しだけ違う違和感を感じた。警戒しながら盗賊は皆に先んじて早足で進む。
やがて、明かりの灯る部屋らしき場所にたどり着いた。
ボス部屋と言っても過言では無い広さを持ち、処に狭しと大松明が灯り照らす大部屋。
誰もが、際奥だと確信しただろう。
そして、大部屋の中央には、巨大ドラゴンがうずくまり、眠たげな眼で、まふたを僅かに上げて見つめている。
直ぐに戦闘態勢に入るが、勝てる見込みはとてもじゃ無いが思い付かない。
ドラゴンは不意に剣士に声を掛けた。
「オマエの先祖だった剣士は、かつて勇者とほざく若者と共に【経験値確保だ。】と叫びながら、わが同胞を殺し回っていた。
その頃のワシは、まだ幼い頃でな、倒された仲間に紛れて震えながら隠れておった。だが、運悪く勇者モドキに見っかってしまい、ワシは神を恨んだ。しかし、剣士は【我が経験値として下さい。】と土下座をして、勇者モドキは渋々ながら立ち去った。剣士は、笑いながら【二度と捕まるなよ】と逃がしてくれたのだ。その後のワシは、修行と共に、事あればソナタ剣士一族の情報を得て見守っている。その恩の一端として、今回呼び立てた。まあ、許せ。
我が秘宝をソナタ達に与える。また、一度だけ一大事の時に力を貸そう。ソナタの守護龍が守っている事を忘れるな。」と。
気が付いた冒険者一行の手には、各々に合った武器防具を装備しており、その全てが神級と評価とされる品々だった。
彼らは、その出来事を誰にも話す事なかったが、
何処と無く、冒険者の間に広まっていった。