勇者と冒険②「集合場所」
運のない男、松田アキラ。
押し付けられた残業を終え、帰宅の途中に気になる店に引かれ、苦し紛れに購入した品物に付いてきた【抽選券】。
ネットで抽選結果を見ると当たっていた、喜ぶアキラを尻目に夜は更けていった。
抽選に当たったアキラは、早速賞品を確認する為に画面を食い入る様に見つめた。
賞品は、どうやら【ツアー旅行】らしいが、行き先がぼかされて今一要領が得ない。少し腑に落ちないが、嬉しさが先に立ち 少し位の事は気にならない。
早速、言われた通りに、当選券を写真に落として、必要事項を事務局に何の躊躇いも無く送った。無用心過ぎるが、本人は一切 気付かない様だ。
暫くすると、事務局から旅行の案内と注意事項がアキラのメールに届いた。
旅行案内には、
20○○年 ○月 ✕日 出発
不思議がいっぱい、異世界ツアー 三泊4日
行き先及び旅行日程等は、到着まで秘密とさせて頂きます。
なを、当日は添乗員が伴に行動しており、現地に専門のスタッフをご用意しておりますので、ご安心頂けるツアーになっております。
なお、到着地での無用なトラブルを避ける為に奇抜な服装及び、不用意な行動はお控え頂けますよう、ご協力をお願い致します。
○✕事務局
「行き先が不明な、異世界ツアーか。少しワクワクするな!・・・あぁ、✕日なんて3日後じゃないか。会社を休めるかな?・・・しょうがないまた、親戚を一人の殺すかな・・・。」
旅行当日。
「仕事もどうにか無理矢理に休みを取ったし、用意も万端だ。そろそろ集合時間か、少し早いけど集合場所に行こうか。」
アキラは、動きやすい靴と服装で、足取りも軽く、集合場所へ向かった。
「でも、何で古ぼけた教会前が集合場所なの?
移動手段は、電車なら駅前とかじゃないの
それとも、此処にバスが来るのかな?」
集合場所には、まだ、誰も来ていない。
「早すぎたかな?添乗員や、係の人も居ないけど。」
アキラは不安そうに時間まで待つ事にした。
やがて、ひとりふたりと集まり始める。
そして、集合時間前に集まったのは、6人の男女で、時間ギリギリに2人がやってきた。
定刻時間になると、何時の間にか係の男が、現れて、「おはようございます。今回お集まりの方々は、異世界ツアーご当選の方々とお見受け致します。これより、手続きを行いますので、当選券とお名前を確認させて頂きます。」
男は、書類を片手に一人ひとりを確認の為に回り始めた。
やはり、今回のツアー参加者は、8名の様で有り、アキラを除く7名は、各々が、相手を見定めるかの様に、少し離れた距離で、男のチェックを待っている。
次々とチェックは進み、アキラの番となった。
「松田アキラ様。お間違い有りませんか。当選券を拝見致します。ありがとうございます。なお、この後バスに乗車して頂きますが、大変に揺れますので、この酔い止め薬を必ずや飲んで下さい。飲まなかった際に発生する事に付きましては、当ツアーは関与致しかねます。必ずお飲み下さい。」
何か妙な言い回しに、違和感を感じたが、到着したバスに急かされる様に乗り込み、バスは発車した。
8名は、各々がバラバラに座り、警戒感と違和感が一杯の異世界ツアーが始まった。