哀しみの連鎖
魔王は、勇者によって倒された。
だが、勇者に喜びの表情は見れなかった。
なぜなら、魔王は四年前に突如消息を絶った親友その者だったから・・・。
大理石に描かれた魔方陣に男は立った。
王国は男に向かい、魔王軍の攻勢を受けている現状から、勇者召喚で救いをもとめた。
彼はイヤをう無しに王国での戦いに巻き込まれて各地を転戦して、結果として魔王軍を打ち破った。
王国は、ここぞと魔国に攻め込み占領地を拡大していく。
勇者は、王国軍に従い、占領地に駐留したが
そこで目にしたのは、魔族に対する差別と弾圧。
幾度となく、軍隊に止める様に懇願したが、帰って、男は疎んじられ、弾圧は増すばかり。
魔族の村での大虐殺を契機に、男は王国を離れて果てなき旅に出た。
旅先では、魔族と共に暮らし、魔族の温かさに触れ、魔族の強いたげられた現状を知り、解放の為に尽力する事を誓った。
魔族の仲間と伴にする中で、重病の魔王に会う事で、魔王の魅力に引かれて、彼を師と仰いだ。
病床の魔王は、熱心に聞く姿の男を温かく見守り、最期の時に魔国の全てを男に託して、眼を閉じた。
はからずしも、男は魔王として立ち上がった。
魔王は、魔族解放の為に王国と戦端を開き、
再び、戦いが始まった。
魔族優勢の中で、王国は再び勇者召喚を行い、
新しい勇者がこの地に立った。
新勇者の強力な力により、魔王軍は各地で撃破され、魔王が籠る魔城が最後の戦いの場となる。
仮面を被る魔王。
意気揚々と攻め立てる新勇者。
力は歴然としており、数合を待たずに魔王は倒れた。
新勇者は、倒れた魔王に近寄り仮面を外し、そこに親友の姿を見た。
僅かの息の中で魔王は、簡単な挨拶と魔王になった経緯を絶え絶えに語り、友の腕の中で静かに眼を閉じた。
茫然の新勇者。
喜びに駆け寄る仲間。
歓声を上げる王国軍。
・・・大歓声に書き消される中で嗚咽の声が静かに流れる。
王都では、沿道をうめる人々が大歓声を上げて、王国軍を迎えた。
そこに新勇者の姿はなかったが、誰も気に留める事もなかった。