召喚勇者
俺が異世界に召喚されて、一年が経とうとしている。
魔王軍の進攻も沈静化しており、いまは魔物退治に精を出している。
もっとも、日本では引き籠り生活を送っていた。
時々、買い物に出たとしても、人通りの少ない閉店間際の時間帯に行く程度だったの毎日だった。
ある日何時もの様に目が覚めたら、見知らぬ広間に俺は居た。周りを屈強な騎士達が囲み、偉そうな男が何かを話していたが、俺は頭が混乱してパニック状態だったらしい。
気が付けば、個室のベットで寝ていた。
狭い部屋は俺の心を落ち着かせる。
俺が、気が付いた事を察知したメイドが食事を用意してくれた。
豪華な料理の数々に、目を奪われる。
久々のまともな食事に感激しながら、ふと視線を上げると、麗しい美少女が侍女を伴い立ち竦んでいた。
俺は食事に未練を残しながら、美少女と対面をした。
彼女が言うには、
【此処は異世界であること】
【魔王軍に王国が苦しんでいること】
【魔王に対抗する為に、俺が召喚されたこと】
【召喚者は、高い能力と豊富なスキルがあること】
【俺に王国を守って欲しいこと】
まあ、定番の流れであった。
日本では、引き籠りで、冴えない男だった俺に真剣な表情で訴える美少女を悲しませる事は、俺には出来なかった。
不承不承ながら、承諾した。
ただ、俺の現状をたどたどしい言葉ながら訴えて、納得してくれたと思っている。
王国は、
対人関係が難しい俺に、気さくで居ても気にならない仲間を付けてくれたり、
気分が乗らない時は、休む自由が与えられて、心身ともにリラックスしている。
もっとも、今の魔王軍の沈静化が後を押していることなのだが。
そして、美少女が毎日こんな俺の処に着てくれて、時には話し相手に、時には励ましてくれる。
そんな毎日に、俺は満足している。