古の勇者召喚物語
魔王軍の度々による領内進攻に疲弊した王国では、勇者の召喚を検討し始めた。
「皆のもの。民に更に重い税をかけて、高名な魔導師を呼び寄せよ。金が足りなくば、民から搾り取ってでも、有能な勇者を召喚させるのだ。」
王は、王国民を虫けらの様に考え、そして扱ってきた。
「勇者には、たっぷりと我ら貴族を守らせるのだ。召喚に掛かった費用に見合った対応をさせよ。搾れるだけ搾るんだ。」
王は、召喚される勇者に対しても、奴隷の様に扱う積もりらしく、言葉の節々から不遜が滲み出ている。
王国中より、随一と称される隠者が、半ば脅されながら王宮に連れ出されてきた。
隠者は、初めは拒否を貫いていたが、やらねば民衆を殺すとの王の言葉に負けて、勇者召喚魔法を実施した。
王からは、【高いステータスとスキル】を持つ、最高レベルの勇者を求められ、隠者は、要求を魔法に込めて召喚を行なった。
長い時間が過ぎ、疲労困憊で、いき絶え絶えの隠者は、望み通りの勇者召喚を成功させた。
王は喜び、突然の召喚に、戸惑う勇者に奴隷の首輪を嵌めて自由を奪う暴挙に出た。
悲しみの眼差しの勇者。
それを見詰めている虫の息の隠者。
笑いの止まらない王と重臣たち。
ところが、倒れてる筈の隠者が突然に立ち上がり、怪しい光を帯びた目付きで、王たちに呟いた。
「望み通りの勇者を召喚した。しかし、まだ このままでは不十分だ。最後の仕上げを行う。」
最高の勇者が居る。それ以上の何かを更に行うと言うのか。王の心の高まりは更に加速する。
隠者は、呟いた。
「最高かつ最強の勇者には、最高レベルの国家と指導者が必要だ。・・・・王よ!お前ではダメだ。王宮と共に消え失せるが良い。」
目映い光が、王国を包む。そして、王宮は消え失せた。
後に、女神様の言葉が王国民に下り、新しき王が生まれたと記録されている。