帰還の理由
勇者達が召喚された。
大理石に刻まれた魔方陣に佇む若き男女の群れに向かい、宰相らしき男が大願した。
「勇者殿。お願い致します。
王国は、魔王軍の攻撃で危機に陥っており、異世界からの勇者殿のご協力を熱望しております。」
男の願いに対して、召喚者達は不平と絶望を吐き散らしている。
そんな彼らに対し宰相は、
「突然の召喚でご不満が有りますでしょうが、
召喚者の方々は、女神様より、高い能力と有益で豊富な魔力とスキルが、授けられており、少しの訓練で魔族に対抗出来きます。
なお、魔王軍撃退の報酬として、充分な程の宝石をご用意して、ご帰還をお約束致します。
また、これから、皆様方のステータス確認時に、戦闘に適さないスキルの方々は、ひと足早く、ご帰還の手続きをご用意致します。
まずは、ステータスを確認されてその後のご帰還等のご検討をお願い致します。」
宰相の言葉に続き、騎士達に導かれ、各々が中央の水晶玉に手を翳し、ステータス確認を行なった。
全員の確認後、大広間でのパーティーが行われ、王国からは、若く美しい女性達と逞しいイケメン騎士達が、ホストとして勇者達を迎えた。
美女、美少女にデレる男達、
美少年、美青年、イケオジに蕩ける女性達、
何時しか、パーティーは和気あいあいの雰囲気に包まれる。
翌朝、大広間に集まった勇者達は、まずは戦闘・非戦闘のスキルに分けられた。
続いて、この世界に残るか、帰還するかの意思が確認された。
召喚者の2/3が残る事を決め、残りの1/3が帰還を決めた。
帰還を決めた1/3には、迷惑料として幾ばくかの宝石が与えられて、次々と魔方陣の中に消えていく。
自分は、非戦闘スキルの事も有るが、すぐに帰還を決めた。
美しい女性に未練が無いかと問われると未練タツプリと答えたいが、それ以上に【トイレ】と【食事の不味さ】に我慢が出来ない。
やはり、どんなにお金や美女を出されても、自分は、日本と比べると、絶対にこの世界で暮らせない。