呪いの迷路
魔王を破った勇者に呪いが発動した。
暗い闇が辺りを包み込む。
手足の自由が束縛された。
ただ、微かだか魔力が適用出来そうだ。
全身を魔力で包み、防御はOK
思考と視線に呪いは大丈夫だ。
やがて、脳に直接映像が送られて来た。
目に映るものは戦いの記憶らしい。
何の術も無く魔物に殺される兵士と人々。
各地の城壁が破壊され、魔物に蹂躙される街並み。
見たことの無い男が殺された。
王冠から王様らしい。
画面が替わり、のどかな一面の草原。
冒険者が魔物を狩っては、解体し魔石を取り出す映像が流れる。
何処かの魔物の集落が襲われ、小屋に火が放たれる。
燃え上がる小屋に幼い魔物が冒険者?
いや、勇者の様に殺された。
何時の時代の勇者なのか?
残忍な笑い顔に虫酸が走る。
幾多の場面が流された。
幼子を抱き締め殺された母子に涙が溢れる。
一転して狂喜に狂う魔物と人々の群れが映し出された。
怒りがそして、涙が流れ落ちる。
しかし、よく見ると人々の中に自分を見つけた。
魔物の中に魔王が映る。
狂った時代なのか?
狂ってたのが自分自身なのか?
判らなくなっている。
映像は流れ、懐かしい日本の風景が・・・無性に帰りたい。
その後には、かっての勇者が見ていた風景が、静かに流れて行く。
あの頃の自分には、今の自分はどう映るのだろうか?
気が付くと身体の束縛は解かれている。
今後、自分はどの様に生きて行けば良いのだろうか?・・・判らない。
勇者は、正しく呪いの迷路に嵌まってしまった様だ。