212/294
タンクの悩み
読んで下さり、ありがとうございます。
タンク職の男がパーティー面接を受けている。
男はSランクの歴戦の猛者であった。
数々のパーティーに所属して各地のダンジョンを踏破してきた自負が全身から漲っている。
ただ、パーティーを渡り歩く中には、全滅もしくは今後の活動が困難との事で解散した事は、数知れない。
しかし、どの様な時でも彼だけは無傷で帰還した。
人々は彼を【不死身の男】と呼び、その力量を称えた。
男はタンク職のスキルに恵まれた上に、女神様に好かれたのか、加護と回復系と少しの攻撃魔法を与えられていた。
傍らに相棒の大盾が有る。
高位レベルダンジョンでの出土品で【耐魔法攻撃】【耐物理攻撃】【不壊】を持つ、優れ物である。
面接は順当に進み、自己アピールとなる。
「タンク職ながら、他の人より素早さに自信が有ります。その素早さで皆の前に回り、大盾で皆を護りきります。」と強調する。
面接は合格した。
その夜、男は宿のベットの上で呟いた。
「面接では、決して言えないなぁ。
俺の悪運の引き強さと誰よりも速い逃げ足のスキルは・・・。」