勇者は最後まで運任せ
「約束通りに帰還の準備をするわネ。少し待っていて・・あぁ!そうそう・・・。」
今、異世界で魔王を倒した勇者は、女神様との約束通りに、元の世界に帰れる事を期待しながら待っている。
女神様は、勇者と楽しく喋りながら帰還魔法の操作を行う。
覚束ない手元が、危なかしいが自信たっぷりな女神様は、余裕綽々?。
少し不安そうな眼差しの勇者が、話に夢中に成りそうな女神様を、急ぎフォローする。
「終わったわよ!さあ。行ってらっしゃい!」
笑顔満面の女神様に見送られて、勇者は元の世界に旅立った・・・はずだよね?」
急ぎ顔の天使が女神様に忠告している姿が、旅立つ勇者の視線に映る・・・不安が残るが発動した魔法は止められない。
気が付いた勇者は、教室に倒れ込んでいた。
窓に赤い夕陽が射し込んでいる。
懐かしい教室の姿。
帰って来れたんだ。
感激に声が詰まっている。
あの日から何も変わっていない・・・はずだよね?
何故か外が騒がしい。
窓を開けると懐かしい町並みと共に見慣れた姿が目に飛び込んできた。
そう!異世界で見慣れた怪鳥が大空を舞っていた。
「ここは?本当に俺の住んでいた世界なのか?」
大声で女神様に叫んでいた。
天使は忠告したが少し遅かった。
女神様の帰還魔法が一部違っていたのだった。
勇者が召喚された時点で、
地球は
【勇者の召喚された世界】と
【勇者の召喚されていない世界】の
並列世界に分岐していた上で、片方の世界が、その後がどの様に変化したのかは、予測不可能だったらしい。
それを考慮しない女神様は、帰還魔法の行き先は、勇者の運に任せた形となり、
勇者の運は・・・良かったのか悪かったのだろうか?
まあ、どちらの世界でも、両親も知人もいるだろう。・・・運が良ければの話だが?