魔王
静かな朝を迎えた。
清々しい気分の気持ちの良い朝だ。
気分が良い朝だ。そして無性に腹が減った。
宿の食堂に降りると食堂のザワツキが聞こえてくる。
朝食を貰いながら聞き耳をたてた。
王都からの冒険者が惨状を訴えている。
何事かと考えながら食事を終えて、ギルドへ向かった。
ギルドでも王都の壊滅の噂で持ちきりだ。
【魔王が襲来した】【魔王で王都が壊滅した】
【魔王、まおう、魔王が生き返った】
【王が死んだらしい】【王国は終わった】etc
ギルト内は緊張感が漂い、人々は視線を落とし絶望感が支配している。
男は召喚された日をふと思い出した。
召喚された時点で【隷属の首輪】を付けられて、戦場から戦場へ駆り出された日々のことを。
屈辱の、そして哀しみの日々を・・・。
何度も何度も王を女神を恨んだ事を。
隷属の中で、自我を失いかけた時に、命令の中に無かった負傷していた魔族を助けた事から、僅かな希望が生まれた。
魔族の提案で男は、一度死んだ。そして死ぬ事で隷属の軛から逃れられた。
それからの男は、冒険者として辺境をさ迷い、復讐の機会を待っていた。
やがてその日が来て、王都は壊滅した。
男は一度だけ、魔王と化した。
その後の歴史書には、魔王の復活は記されていない。