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勇者
勇者が召喚されたらしいとの噂が王都に駆け巡った。それと同時に王が倒れて命を奪われたとのデマが飛び交った。
王都は、デマと噂とそれを信じた悪人により、混乱が新たな混乱を産み続けていた。
「召喚された勇者が、人々を殺し捲っている。早く逃げろ。扉を閉めて隠れろ。」人々は、逃げ惑う。
子供が逃げ急ぎ、転んでしまった。
黒い影が子供の前に立ちはだかる。手に剣を握り締めて、狂った表情が見てとれた。
王都巡警中の俺は、咄嗟に子供の前に駆け寄る。狂った男の剣が、子供を抱き締めて守る俺の背に振り下ろされた。が、・・・。
後ろを振り向くと、狂った男が怯えて、後図去りをしている。
何が有ったのだ。戸惑う俺に、突然の声が響く。
「そなたの勇気に我は加護を与える。世の狂いを正せ。」
何時しか、光輝く聖剣を握り締めていた。
人々が集まり、口々に囁き、そして大きな歓声となる。
「勇者の誕生だ。」