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転移

目が覚めると空が見えた。

よく晴れた空だった。

どうやら俺は外で仰向けになっているようだ。

カーネル・サンダースによって川底に沈められたと思っていたが、それは夢か幻だったようだ。

そりゃそうだ。

そんなアホな死に方があってたまるか。

ただ、奇妙なことがあった。

俺の右側を太陽が照らしているのだが、左側をもう一つの太陽が照らしているのだ。

太陽が2つある。

片方は月かと思ったがまばゆい光を放つそれはどう見ても太陽だった。

俺はノロノロと上半身を起こした。

体を起こすにつれ周りの景色が目に飛び込んできた。レンガ造りの建物に挟まれた道の上に俺は倒れていた。

建物自体は欧米風だが、汚れやレンガの劣化が目立つ。

道は舗装されておらず、風が吹く度に土煙がまった。

人の往来も多く、倒れている俺を気にもとめず人々が通り過ぎてゆく。

人種は多様で背の低い者、背の高いもの、肌の黒い者、肌の白い者、肌が緑色の者……………肌が緑色!!

一旦落ち着こう。

目を閉じて深呼吸をした。

ほら、コスプレの大会かも知れない。

俺はゆっくり目を開いた。

周りには背の低い者、背の高いもの、肌の黒い者、肌の白い者、肌が緑色の者、耳が長くとんがっている者、翼が生えている者、体は人間だが顔が動物の者…

まぁまぁ、最近のコスプレは良く出来てるから。。。

一旦落ち着こう。

俺が近くを歩く豹頭の男を凝視していると、その男は大きく欠伸をした。

猫ヒゲが震え、鋭い牙がむき出しになった。

俺が見ていることに気づいたのか、金色の目をギョロリと動かし俺の方を見た。

俺は慌てて目をそらした。

絶対にコスプレではない。

夢に違いない。

俺は地面に頭を叩きつけた。

だが、痛いだけで、目が覚める気配はない。

「もしかして、俺はカーネルに殺されていて、ここは天国なのか!?それとも、もしかして異世界に転移したのか!?」

おいおいおいおい。

テンションが上がってきた。

異世界転移であれば、喋るライオンと悪を倒したり、女神や仲間たちと面白おかしく暮らしたり、楽天市場で買い物をしたり、核兵器になったりと、特別な能力で大活躍するものと相場が決まっているのだ。

俺にはどんな力があるのだろう。

将棋一筋で彼女どころか、女子と雑談さえしたことがない俺だが、ひょっとすると異世界ハーレムなんてことも起こり得るかも知れない。

今の俺は傍目に見れば鼻の下を伸ばしたたいそう間抜けなツラをしていることだろう。

俺は邪な想いを力に勢い良く立ち上がり、往来のど真ん中で叫んだ。

「ステータス!!」


俺が異世界転移してから一週間が過ぎようとしていた。

その間俺は全ての魔法が使える特殊能力が発言し、冒険者ギルドでステータスがカンストしていることが判明し、有り余る能力で美少女を助けまくってハーレムパーティを作り上げ、前世の知識を生かした発明品で大金持ちに、、、、、、、、、、、、、、、、なっている訳もなく、普通に餓死寸前だった。


思ってたんと違う!

俺は一週間街中を放浪した挙げ句、街の入口にある大きな橋の下を寝床に定めた。

朝になると近隣の住民が洗濯や体を洗いに来る。

静かな環境では無かったが、雨を防げるのがありがたかった。

俺の他にもホームレスの方々(今では俺もそのお仲間な訳だが)が何人か暮らしているようだった。

幸い大きな橋だったので、縄張り争いで追い出されるようなことは無かった。

寝床の確保に成功した俺だったが、食料の確保には失敗していた。

所持品は財布と水没したスマホのみ。

この世界の言葉もわからない。

盗みを働く度胸もなく、市場に並ぶ果物や肉を指をくらえて見ているしかなかった。

俺が打ち上げられた魚のように口をパクパクさせていると、ホームレス達が車座になって何かをやり始めた。

もし食事をしているのであれば、おこぼれに預かれるかもしれない。

俺はノロノロと立ち上がると、ゾンビのような足取りでホームレス達の方に近づいていった。

近づくにつれ、久しぶりの食事にありつけるかもしれないという俺の希望はしぼんでいった。

ホームレス達は食事をしているわけでは無く、小石を並べて遊んでいるようだった。

良く見れば、地面にマス目が引かれており、マス目内の色とりどりの小石を動かしなっているようだ。マス目は9✕9で、小石の数は全部で40個、、、、、、、、、、、、、、、って、これ将棋ちゃうか!?

ただ、対局している二人は大声で何か言い合いながら、駒を指していた。

俺が知っている将棋の指し方とはちょっと違う、やっぱり将棋じゃないのか?

だが、小石でできた駒の動きを見ると、将棋の動きにしか見えない。

駒の種類は小石の大きさや色で見分けているようだ。

相手陣と思しきところに入った駒が裏返された。

裏表で若干色に違いがなる。

絶対に将棋だ!

だが、対局者はついに一手指す毎に相手の頭をどつき合いだした。

もしかして、チェスボクシングのようなゲームなのか!?

彼らはヒートアップし、ついに将棋そっちのけで殴り合いの喧嘩を始めた。

よくあることなのか、周りも慌てて止めたりはせず、殴り合うままにしている。

対局の席が空いたのを見て俺は盤の前に滑り込んだ。

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