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第4章 第3話 東の辺境伯家と素材の納品

 第5ベースキャンプ場に1週間程滞在し、青種のドラゴン達と遊んで満足して帰る。

 ユイエ、アーデルフィア、サイラス、メイヴィルの4人はそれぞれ青種の背に乗ってアディーエに帰った。残り6人は持って行った魔馬車での移動である。


 分かっていた事ではあるが、地上を走る魔馬車より空を飛ぶドラゴン種の方が圧倒的に早い。魔馬車だと早朝に出て夕方に着くくらいの距離があるのだが、早朝に出て昼過ぎにはアディーエに到着した。4頭を城の訓練場に降下させると遠巻きに兵士、騎士達に取り囲まれたが、騎乗具を付けて人が乗っているのを見て野生の野良竜ドラゴンではないと気付き、乗っている面子を2度見して領主夫婦と護衛の2人だと気付くとギョッとした。


「傾注!青種のドラゴンとドラグハート魔境伯家は友好関係にある!今後青種のドラゴンが遊びに来る事もあり得るので覚えておいて欲しい!敵対行為はご法度、餌は焼いた巨獣の肉を好んで食べる!」


 ユイエが騎乗したまま声を張り上げ、周囲に集まっていた者達が敬礼で返したのをみて満足げに頷いて竜から降りた。


 青種のドラゴンから騎乗具を取り外してやり、魔法の鞄(マジック・バッグ)に入れておいた肉を取り出して餌皿に載せて喰わせると、「ククルゥ」と嬉しそうに鳴き、尻尾を地面にびったびったんとやりながら肉を食べた。アーデルフィア、サイラス、メイヴィルも同様に騎乗具を解除してお礼の餌を食べさせながら首筋や頭を撫でたり掻いたりしてやる。


「普段来ないこんなところまでよく飛んできてくれたな。ここが俺達の街だ。気を付けて帰れよ」

「クルァァ!」


 伝わったのかどうかは良く分からないが、何か返事のように鳴き声をあげると、4頭は離陸して北へと飛んで帰って行った。



「竜に乗る騎士って物語の中でしか居ないと思ってた」

「ほんとそれ。翼竜ワイバーン兵で周辺国を威圧してる帝国がみたら憤死しそう」

「空の支配者だぜーって顔して飛んでたやつらが、隊列乱してパニック起こしそうだよな」



 青種達が去ってから城内に戻った領主夫婦は、黙って出て行き公務を1週間空けた罪によりイクシス・ワトソンをはじめ文官達にしこたま怒られた。仕事量が多すぎて文官が足りないからカリカリしてるんだなと考え、文官を増やす事を早期に何とかしようと、優先度高めに設定し直した。


◆◆◆◆


 執務室で机を並べて仕事をしていたユイエとアーデルフィアだが、二人の机の上には文官達からの報復のような書類の山が山脈と化していた。


 それぞれ文官達が仕分けした書類達である。「文官が決裁したからその報告」の山、「領主または領主代理の決裁が必要なので署名待ちの書類」の山、「急ぎの案件で早々に対応しないとマズい書類」の山、3つの山に分かれている。


 とりあえず「急ぎの案件で早々に対応しないとマズい書類」の山から着手している。

 山を崩すべく書類に目を通していると分かってくる点として、「文官が足りない」、「武官が足りない」、「建設の対応が追いついていない」等々、人手不足の問題である。


 このうち「建設」や「治水工事」に関しては鉱山族ドワーフ達に外注すれば良いとしても、文官、武官不足の問題はそうもいかない。

 最初期にリカインド宰相やリオンゲート大公が人手を回してくれたからこそ何とかなっているが、それが無かったら今のアディーエは無かっただろう。


「よし、一般採用しよう!」

 アーデルフィアがそう叫んだ。

「ん?」

「平民でも字の読み書きと計算が出来れば文官達のサポートくらい出来るようになる、と思う。部下を作る事で仕事の負担を分散させて、その管理に文官達が就いて適宜指示を出せば良い、と思う」

「それで?」

「武官はもっと簡単。武力があれば騎士や兵士に取り立てて、警邏の衛兵達もどんどん増やす!人の出所は……。まずアディーエに居る人からで募って、サテライト1とサテライト2でも募集を掛ける感じで……」

「教育の時間と維持費用は?」

「税……はまだ回らないから、ユイエ君と私で頑張るしかない、的な」

「まぁそのくらいやるけどさ?領外からの外貨が足りないとおもわない?今まで物々交換に頼ってきた貸し借り関係のツケで」

「外貨……外貨かぁ……。ドラゴン素材とか魔法金属とか、うちの特産って割と戦略物資だから、下手に現金化し難いしね……」



 二人であれこれ話し合いつつも、山はコツコツと切り崩されていった。


◆◆◆◆


 翌週、二人は内政官達に皇都に行く旨を伝えて、皇都へやってきた。困った時は先輩諸氏に相談するに限る。


 リオンゲート大公に相談すると、≪神樹の森≫の装備更新で素材を発注しても良いという回答がもらえた。≪神樹の森≫の東側の辺境伯家である【プロテイオス】家も帝国に手を焼いていて、良い装備は欲しがるだろうという情報も聞けた。


 次に、リカインド宰相に時間をもらって相談すると、皇国騎士団の装備更新に素材を買っても良いとのありがたい回答が聞けた。ただ、状況的に東の辺境伯家プロテイオス家に優先して新装備を配備させたいので、プロテイオス家に装備更新のための補助金を検討して打診してくれる事になった。



 ≪樹海の魔境≫領の特産品である高品質素材の卸先に3箇所の取引先の目処がついた。リカインド宰相の仲介でプロテイオス家からの回答を聞いてからであるが、アディーエに連絡をくれる事になった。


 素材を外販するのであれば、大容量の特製魔法の鞄(マジック・バッグ)がいくつあっても足りない。皇都で買えるだけ買って領地に帰った。


◆◆◆◆


 プロテイオス家からの回答待ちの間、山脈沿いでのドラゴン狩りに励んだ。


 数日は狩りで不在になる事と、外貨を得るための素材狩りであり、必要な事だと内政官達に説明をして理解してもらいアディーエを出発した。


 久しぶりに山脈沿いで青いドラグーンを見掛けたので、焼いた肉をで釣ってみたらのこのこと出てきて、尻尾振りながら肉を食べて山に帰って行った。

 青種のドラゴンもそうだが、青色のドラグーンも友好的である。色で気性に違いが出るのだろうか。


 数日山脈沿いで暮らし、持って来た魔法の鞄(マジック・バッグ)ドラゴン素材を入れられるだけ入れて領都アディーエに帰った。


 領都アディーエに戻るとリカインド宰相から連絡が届いており、プロテイオス家が素材の購入を受け入れたという。同時にマインモールド領に職人と付与師の大量派遣の依頼も出したらしい。

 リカインド宰相がそれだけ積極的に動くのは、それだけ東部の辺境伯の戦線を心配しているのだろう。


 追記で、別の紙に帝国の翼竜ワイバーン兵をなんとか出来ないかという相談が書かれていた。


 リカインド宰相にはまだ青種のドラゴンという航空戦力のアテについて伝えていないはずだが、知ってる事を伺わせる相談で思わず苦笑いが出た。


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