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第2章 第4話 秋学期と工事費

  鉱山の開発が進み、第5ベースキャンプ場から鉱山族ドワーフ達が第1鉱山内に移り住んでいった。鉱山内にすっかり集落が作られている。


 鉱山周辺は青種のドラゴンの縄張りのため、他の危険な魔物は殆ど現れない。第5ベースキャンプ場から通うならその護衛が必要だと思っていたが、どうやら鉱山族ドワーフ達は職場に住む事を選んだらしい。


 酒や食料の調達も必要なので、鉱山はドラーゲンに任せてユイエとアーデルフィアは第3ベースキャンプ場に戻ってきた。


 思っていた以上に高く、厚く、頑丈な防壁が広々とした敷地を囲っており、この大樹地帯の巨獣達もそう簡単には乗り越えられないように作られていた。探索者シーカー部隊は防壁にやってきた魔物達に随時対処しており、食肉不足には悩まされそうにない感じであった。


 現在は防壁内で都市インフラの基礎工事をはじめているらしい。200名規模の鉱山族ドワーフ達と土木工兵科のメンバーが協力して作業に当たっている。上下水道や浄水施設の工事など、地面の下に隠れる構造物達を作っている。

 こちらも、肉には困らずとも野菜や酒には困窮してくるであろう事が目に見えていたため、ユイエとアーデルフィアはジョセフ・ポール・マーカスを防衛責任者として残して行く事にし、メイヴィルとサイラスだけ伴って皇都に戻る事にした。


 食料や酒以外に何か必要な買い物はないかと確認したが、「無ければ作る」がモットーらしく何はともあれ酒を求められた。


 領都となる予定の第3ベースキャンプ場の視察を終えると、今度こそユイエとアーデルフィアは皇都へと戻っていった。



星昌歴せいしょうれき875年。10月末。


 2人は皇都へと辿り着き、探索者シーカーズギルドに新しく持ち込んだ獲物達の解体依頼を出して受領の明細を受け取った。


 その受領明細を持って次に向かったのが、マインモールド工房である。本店に頼んだ人員増加は無事行われたようで、工房は何とか回っている様子であった。


「これはこれは。ユイエ様、アーデルフィア様、お久しぶりでございます」


 さっそくゼッペル氏が現れ、探索者シーカーズギルドに出してきた解体依頼の受領証を見せた。


「今回はあまりドラゴンは狩っていませんが、何か欲しい素材があればギルドに言って押さえてこっちに回します。必要な物はありませんか?」


「そうですね……まだ前回までのドラゴン素材も消費し切れていない状況でして……。今回は買取は見送らせてもらっても?」

「えぇ、構わないですよ。それじゃ探索者シーカーズギルドに全部売却だと伝えてきます」

「あ、ユイエ様。探索者シーカーズギルドのご用事が終わりましたらもう一度ご来店願えますか?前回ギルド経由で回していただいたドラゴン素材の件のお話しもございますので」

「承知いたしました。すぐ済ませて戻ってきます」


 ユイエとアーデルフィアは探索者シーカーズギルドに戻ると、先程の解体依頼の受領証を見せ、今回は全部位すべて売却に変更を伝えた。書類に修正を入れてもらい手続きを済ませると、再びマインモールド工房に戻ってきた。


「すみません、お待たせしました」

 ユイエとアーデルフィアが工房に戻って来ると、ゼッペルと店長ライゼルリッヒ、職人代表のガイエン、付与師代表のアウルクが待つ応接室に通された。

「いえいえ、こちらも丁度準備ができたところでした」


「先ずはこちらをご確認下さい。探索者シーカーズギルドから引き渡されたドラゴン素材の目録になります」


 項目、数量、小計、合計など見やすい形で記載された買取価格の御見積りであった。


 前々回、カミュラ皇女のためにドラゴンの心臓を獲りに行った時の戦果は赤種36頭、緑種19頭、黄種48頭、計103頭であった。


 前回のベースキャンプ場の開拓での戦果赤種34頭、緑種28頭、黄種49頭、計111頭である。


 思っていた以上にズレがあったようだった。


「あれ、思ってたより数が居たようですね。すみません」

「はい。マインモールド領からの応援も到着していなかったため、納品された時には途方に暮れました」


 ライゼルリッヒが遠い目をしてそう言った。その苦難を乗り越えたのだろう、きっと皇都店にはボーナスが支給されているはずだ。


「こちらが適当に伝えていても、誤魔化したりせず誠実に対応していただけて感謝し通しです」

「いえいえ、我々こそいつもご贔屓にしていただいておりますから」

「それで、この御見積り額について何かお話しがあるようですが?」

 お互いに頭を下げ合うユイエとライゼルリッヒに、横からアーデルフィアが差出口を挟んだ。


「おお、そうでしたそうでした。こちらが前々回に追加で納品いただいたドラゴン素材の内訳でございます。赤種36頭、緑種19頭、黄種48頭、計103頭となります」


 この追加納品の件はカミュラ皇女殿下のための心臓狩りをした時の副産物である。


「初回の納品時はこちらで作成した装備でのお支払いとさせていただいておりましたが、前々回はそういったお約束を取り付けておりませんでした。金額が金額なのでどうお支払いしようかというご相談だったのです」

「なるほど、現金支払いを振込みで、と言ったら工房の運営資金にまで影響が出てしまうという感じですかね?」

 ユイエが頷きながら要点を噛み砕いて確認する。


「その通りでございます。作成した量産向けの装備を販売に回すとなると市場価格の破壊が予測されますので、卸先も慎重に慎重を期しております。回収ははじまっておりますが、まだしばらく掛かりそうな状態ですので……」


 ユイエがおとがいに指を添えてしばし考え、口を開いた。

「それでは、代価はいずれいただく事を前提として、一旦貸しの状態で宜しいでしょうか?」

「それはお支払いを遅らせてもいただいても良い、という事でしょうか?」

 ライゼルリッヒの確認にユイエは頷き返した。


「実をいうと、≪樹海の魔境≫の開拓計画をジェスタ大公直々にお手伝いいただける事になっておりまして。領の開発費用について皇城からの支援金を確認し、不足する分の対応の開発費用を素材買取費用で相殺していただく、というやり方でも良いかなと思いました。まずは皇城からの支援内容を確認させていただいて、それから改めてお話しとさせていただいてよろしいでしょうか?」

「はい、畏まりました」

 ライゼルリッヒが頭を下げるのでユイエは頭を上げさせ、困った顔で謝る。

「即断即決して差し上げられずすみません。内容の確認が取れたら、また改めてお伺いさせていただきます」


 取引の話しを一旦横に置き、先に皇城の意向を確認する方に舵取りしておいた。


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