第1章 第27話 夏季仕事(5)登城
星昌歴875年。7月中旬。
一旦ウェッジウルヴズ家の屋敷に帰還した。アズライール伯爵家にも異母妹アリーゼの入試について確認の打診を依頼しておいた。
リオンゲート・フォン・ウェッジウルヴズ大公に今回の遠征の成果を話すと、腕を組んで難しい顔をしていた。
「≪樹海の魔境≫を踏破して山脈へ続く道を開通させ、大量の竜素材を持ち帰り、開拓した山脈に希少鉱石の鉱脈を発見……。この成果だけで≪樹海の魔境≫全域がユイエ君とアディの領土になるかもしれないな。念のため東西への踏破と道を開拓すれば誰も文句は言わんだろう。それだけの結果を出している」
「アーデや皆がいてこその成果です」
「とりあえずアズライール伯爵と話しを付け、リカインド宰相に話しを通さねばならんな。その後、また登城を求められるかもしれん」
「ハッ」
とりあえず両家の当主の間で情報共有が計られ、エドワード・フォン・リカインド宰相に報告が通るまでに3日かかった。エドワード宰相にウェッジウルヴズ大公から詳細の説明が行われると、2日後にユイエとアーデルフィアを連れて登城せよ、との指令が降りた。
「……という訳で、2日後に迎えの馬車が来るのでそれに乗って登城する事になる」
「承知いたしました」
7月下旬、ユイエの異母妹アリーゼは皇立カグツチ学園の騎士科に合格していた事が分かったので、お祝いに以前使っていた魔鋼の小剣を2振プレゼントした。女の子へのプレゼントが剣はどうかとも思ったが、騎士科に入るくらい剣が好きなら問題なかろうである。
そして、ウェッジウルヴズ大公家の屋敷に皇室の紋が入った黒塗りの馬車がやって来た。アズライール伯爵も登城に備えてウェッジウルヴズ家に来ていたため、4人で馬車に乗り運ばれていった。
以前登城してから3ヶ月足らずでの再召喚である。流れはおおよそ掴めている。更衣室を兼ねた待合室に通され、それぞれに着替えを済ませると別の待合室で合流し、呼び出しにきた騎士に連れられて謁見の間へと進む。
「ウェッジウルヴズ大公家ご当主様とアーデルフィア公女殿下、並びにアズライール伯爵家ご当主様とその子息ユイエ殿、到着いたしました!」
重々しく謁見の間の扉が開かれ、赤絨毯の上を進む。前回同様、沢山の騎士と魔法士、そして中央貴族やたまたま登城していた貴族達が大勢並んでいた。
赤絨毯を進むと両家の当主が片膝をつき畏まる。それに合わせてユイエとアーデルフィアも同様の礼をとる。
「面をあげよ」
皇王陛下に許可が出され、若干顔をあげるがその目線は陛下の足元に合わせている。
エドワードが口を開いた。
「この面子を呼んだのはつい3ヶ月足らず前であるか。今回の遠征についてはウェッジウルヴズ大公から話しを聞いているが……。ユイエ殿、改めて説明を頼む」
「ハッ」
まさかの直の指名に面食らったものの、学園の夏季休暇に合わせて≪樹海の魔境≫を縦断して道を切り拓いたこと、山脈にまで調査の手を伸ばしたこと、道中には砦状の5つのベースキャンプ場を築いた事を報告していった。
「なるほど。この短期間で良くぞそこまでの成果をだされた。まさに稀代の英雄の器よな。して、陛下。≪樹海の魔境≫を切り拓き次第、ユイエ殿とアーデルフィア公女殿下に領土として与えると宣言した件でございますが。前言撤回されますか?それとも、ここで≪樹海の魔境≫を切り拓いたユイエ殿達の領土として御認めになられますか?」
エドワード宰相がミヒャエル陛下に伺う視線を送った。
「前言撤回は在り得ない。ユイエ・アズライールとアーデルフィア・ウェッジウルヴズはあの樹海を切り拓き、見事治められるだけの器量を示した。よって≪樹海の魔境≫および北の山脈沿いの全域をユイエ・アズライールとアーデルフィア・ウェッジウルヴズの領土として認める」
ミヒャエルはここで一度言葉を切り、一拍間を開けて続けて言葉を継ぎ足す。
「ただし、ユイエ・アズライールとアーデルフィア・ウェッジウルヴズの婚姻を確定事項とし、二人に新たな家名として【≪ドラグハート≫】の名と、新たな爵位として【≪魔境伯≫】に叙する。以降、ユイエ・フォン・ドラグハート≪魔境伯≫とし、辺境伯と同列の扱いとする。≪樹海の魔境≫の脅威から、アマツハラ皇国を守る役目を全うせよ」
陛下の宣言にざわめきが広がった。
「ハッ!身命を懸けて頂いたお役目を遂行いたします!」
「ユイエ・フォン・ドラグハートとしてアズライール伯爵家およびウェッジウルヴズ大公家からの独立とする故、アーデルフィア・ウェッジウルヴズとの婚姻は婿入りではなく、ドラグハート家へのアーデルフィアの嫁入りとせよ。二人の婚約自体にこれ以上の変更は求めない」
「……ハッ。ご配慮いただき、ありがたき幸せにございます」
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