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第1章 第23話 夏季仕事(1)開拓団

星昌歴せいしょうれき875年。6月初旬。


 マインモールド工房で装備一式を受け取って帰った翌日。

 エドワード宰相から開拓団の出発日時の連絡が届いた。明日の午前中に、北門広場から出発する事になっている。


「もっと準備に時間が掛かるのかと思っていたけど、随分早かったわね?」

「あの宰相閣下のことだから、指令書を出す前から準備してたのでは」

「……ありそうね」


 因みに、学生の内は親の責任だからと、サイラスとメイヴィル、マーカス、ジョセフ、ポールの何時ものメンバーも一緒に出発する事が決まっていた。


 また、今回は開拓団を率いることになるため、ウェッジウルヴズ家とアズライール家から融通できるだけの魔法の鞄(マジック・バッグ)を大量に持たされている。



「夏季休暇だからって気を抜きすぎるなよ。開拓団の目があるんだからな?あと避妊はしろよ」

「「 」」


 リオンゲートからありがたい激励?をもらいつつ、明日の出発に備えた。


 翌朝、早朝訓練の日課を済ませて朝食を食べると、北門広場へと馬車で向かった。


 見るからに開拓団とその護衛という様子の一団に近付き、声を掛けた。


「≪樹海の魔境≫開拓団の皆さんでよろしかったでしょうか?」


「そうだが……あぁ、ウェッジウルヴズ大公家のお二人ですか?」


 土木魔法使士の代表らしき男が返事を返してきた。


「ユイエ・アズライールとアーデルフィア・ウェッジウルヴズです。よろしくお願いします」

「俺は皇国軍魔法士団の土木工兵科の隊長、キンバリーです。よろしく」

「キンバリーさんは開拓団の構成とか聞いてますか?」

「うちの土木工兵科のメンバーが21人、護衛の探索者シーカーが36人です」

「なるほど。それにウェッジウルヴズ家から私達を含めて7人が加わるので、63名という事ですね。わかりました」


人数の内訳を聞いて確認すると、土木工兵科のメンバーは全員が到着しており、護衛の探索者シーカーは半数の18人しかいなかった。


探索者シーカーの到着率が悪いですね」

「待っても昼までですかね。それを過ぎたら出発しやしょう」


 キンバリーがそう言って肩を竦めた。



 “午前中出発”となっていたのに、昼近くになってからようやく探索者シーカーが揃った。確かに昼前は午前中ではあるが、待たされた側としてはイラッとしてくる。


 待たされている間にアーデルフィアとユイエ、ウェッジウルヴズ家の騎士5名で話し合い、今回の仕切りはユイエが行う事になった。アーデルフィアが「私は旦那様を立てる女なのよ」と言っていたが、あれは面倒臭いからやりたくないだけの顔だった。

 他に、「口調はため口にすること。名前は呼び捨てにすること」等とアーデルフィアから立ち振る舞いについて指導を受けていた。


 人数が揃ったところでユイエが「傾注!」と大声を上げ、注目を集める。


「今回の開拓団の仕切り役、ユイエ・アズライールだ。相手は≪樹海の魔境≫となる。気を抜けば命に係わる。心して行動してくれ。私とアーデルフィアが樹海で別行動を取る際、ウェッジウルヴズ家の騎士3名は現場に残すようにする。判断に困った時の確認先が誰か、よく確認しておいてくれ。」


 ユイエが後方にいるアーデルフィアとウェッジウルヴズ家の騎士5名を前に呼び紹介する。


「こちらからアーデルフィア、サイラス、メイヴィル、ジョセフ、マーカス、ポールとなる。顔と名前を覚えて貰えると助かる。では、各自割り当ての馬車に乗車して出発だ」


 それぞれの割り当て馬車に乗り、移動がはじまった。


◆◆◆◆


 ギリギリの午前中からの出発で、夕方には≪樹海の魔境≫の端まで到着し、初日はここで野営することにした。


 野営の不寝番は護衛の探索者シーカー達の仕事である。それをウェッジウルヴズ家の騎士が管理するローテーションにしていた。


 初日は何事もなく過ぎ、翌朝。


 土木工兵科のメンバー達が伐採をはじめ、それを護衛する探索者シーカー達が周りの警戒と寄って来た魔物の討伐を行う。

 土木工兵科のメンバーは思っていた以上に有能で、樹魔法や土魔法を駆使して次々に伐採と切り株の排除に当たっている。


 その様子を眺めつつ、ユイエとアーデルフィアもマインモールド工房で買った斧と鉈、スコップで伐採を手伝う。


 二人が伐採に回ることで伐採スピードが劇的に上がった。切り株は土木工兵科のメンバーが土を柔らかくする魔法を駆使して効率的に切り株を引っこ抜いていく。根が深く張りすぎていて抜けない切り株は斧で根を切断して除去を手伝った。


「おお、なんかすげーな、ウェッジウルヴズ家の騎士達」

「あぁ、特に若旦那と若奥さんの木こりっぷりは圧倒されるな」

「ありゃ只の魔力刃じゃないな?プラーナも使ってるのか?」


 土木工兵科のメンバー達も負けてはおれぬとばかりに工事を進めていく。


 樹海の入口から馬車が2台、余裕を持ってすれ違いできる広さで、真っ直ぐに道を切り拓いて行く。

 浅い場所で出る魔物は弱く、護衛の探索者シーカー達で余裕で倒せていた。


 それから先も道を切り拓いて行く。森の入口から馬車で1日移動した程の位置で最初のベースキャンプ作りを予定している。


 着工から4日目、最初のベースキャンプ地を整地する。ここでも土木魔法士達が効率的に成果を上げていた。ベースキャンプ地を囲う高く頑丈な防壁を魔法で作り上げ、防壁の外側は空堀にしてあって、尖らせた木杭が侵入者を阻む。今までに伐採した木材も魔法で乾燥させており、木材として利用して、寝泊り出来る建物や物見櫓が造られていった。


 ベースキャンプ作りに1日を要した。夜には森で狩って来た獣型の魔物の肉を振る舞い、皆で第1ベースキャンプ場の完成を祝い宴をした。


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