第1章 第3話 週末の探索者《シーカー》活動(1)
魔法士科に入って基礎から学び直しをしていると、定説として紹介されている内容がアーデルフィアの≪鑑定≫による裏付けを取った理論と食い違う事がある。
講義通りに実践してみると、アーデルフィアの教えてくれる理論の方が正しいと思える事が度々あった。
「アーデルフィア様。魔法士科の講義に期待していましたけど、何だかパッとしませんね?」
「そうね……。魔法はイメージが大切だから、人によって感じ方も違うんじゃないかしら?効果を具体的に考えられるための知識や教養の段階で人それぞれだし」
「そういうものですかね?だとしたら、私にはアーデルフィア様から教えて頂いた方法が合ってるんですね」
基礎魔法と魔力制御までは実技でも問題なく熟せているが、攻撃魔法や中級以降の魔法の講義ではまた意見も変わるかも知れない。
「今のところ、魔法薬学とか魔物学とか、これまで未履修だった分野の方が興味深いです」
「それは同感ね。なんかこう……前の訓練漬けの毎日の方が充実してた感じがして、正直物足りないわ」
「ですよね?憂さ晴らしじゃないですが、週末に魔物狩りにでも行きませんか?」
「良いわね。そうしましょう」
◆◆◆◆
「という事で、週末に魔物狩りに行きます。家の魔馬の馬車を使って≪樹海の魔境≫まで足を延ばしましょう」
アーデルフィアから決定事項としてサイラスとメイヴィルに伝達が行われる。
「その日は非番だったのですが……。休暇を振り替えしてお供いたします」
「週末に魔物狩りに行く頻度が上がりそうですし、勤務のシフトは気をつけましょう」
サイラスとメイヴィルは勤務シフトを変更してまで同行してくれることになった。
「ウェッジウルヴズ家の魔馬車を使うのは良いですが、そうすると帰りまで待たせて帰りも魔馬車で帰るって計画ですよね?御者と、狩りに潜ってる間に馬車を護衛する人員も必要ですね。手配しておきます」
サイラスとメイヴィルが上長に相談しに騎士団の詰め所に走って行った。
「御者と護衛で3、4人ですかね。私達の我儘に付き合わせちゃう人数、更に増えちゃいますね」
「でも魔馬を使わないと狩りの時間が大分減っちゃうし……。≪樹海の魔境≫より近場に私達のレベルに丁度良い狩場があれば良いのだけれど」
「今度ギルドの受付に聞いてみましょうか。東側に拘らず、南でも西でも良いって感じで」
「そうね。そうしてみましょう」
翌日、履修している講義が終わるとユイエとアーデルフィアは探索者ギルドに向かった。昨日話していた近場の狩場についての相談である。
「≪神樹の森≫と同程度以上の狩場で、≪神樹の森≫より近場の狩場ですか?う~ん……≪樹海の魔境≫しか思い当たらないですね。西と南は魔物の繁殖地が少ない上に討伐も積極的に領地でやってますから、西と南には条件に合う狩場はないと思ってください。」
「そうですか、やっぱりないですか……。ありがとうございます。≪樹海の魔境≫にしておきます」
≪樹海の魔境≫関連で特にペナルティのない討伐依頼を受け、討伐証明部位や換金率の良い素材などを教えてもらった。
「そういえば、≪樹海の魔境≫に出てくる魔物の図鑑みたいなものはないんでしょうか?特徴や弱点が知れて、可食部位や討伐証明の部位、売るのに良い素材などが参照できると最高なんですけど」
「魔物図鑑でございますね、お取り扱いしておりますよ」
「あるんですか?買います。おいくらでしょうか……」
パーティの共同運用資金から魔物図鑑を2冊購入し、ユイエとアーデルフィアで1冊ずつ確保しておいた。これで討伐部位の取りこぼしも減るだろう。
買った魔物図鑑を魔法の鞄に仕舞うと、エイルは受付嬢に礼を言い、アーデルフィアと一緒に消耗品の買い出しに回りながら帰路についた。
◆◆◆◆
週末、早朝訓練後に朝食を摂ると、昼食の弁当を受け取ってウェッジウルヴズ家の所有する魔馬の馬車に乗り、≪樹海の魔境≫へと向かった。狩りに同行するサイラスとメイヴィルの他に、樹海に潜行する間の馬車の護衛のため、3名の騎士が付いて来ている。3人ともウェッジウルヴズ家の耳長族の騎士で、マーカス、ポール、ジョセフの3名である。
大所帯になってしまったが【空間拡張】と【空間安定化】の付与された特製の魔馬の馬車は快適で、半日も掛からず午前中の内に≪樹海の魔境≫に辿り着いた。馬車のまま森の中に入って行き、程よい広場を見つけるとそこに護衛の騎士達に頼んでベースキャンプを建てて貰う事にした。
その間、アーデルフィア達4人は【魔力探査】を繰り返して魔物を探しながら樹海に潜行していく。森の外周は例により小鬼や豚鬼、獣型の魔獣など脅威度の低い魔物と遭遇する。
細かい稼ぎではあるが、討伐部位証明の右耳と魔石だけ抜いて後は撒き餌代わりに放置しておく。
少し奥に行くと大熊や食人鬼が出始め、どちらも討伐部位と魔石を回収し、大熊の方は毛皮も剥いでおく。
受付嬢のお勧め通り、≪神樹の森≫と似た魔物のレベルで距離も近く、良い感じである。実家の領地に貢献しない点に目を瞑れば、≪神樹の森≫より良い狩場だった。
更に奥に進むと苔むした甲羅を持つ大亀を見つけたのだが、これは甲羅から出ている脚ですら刃が通らず、手持ちの攻撃魔法も効果が無かったために止む無く撤退した。
次に遭遇したのは茶色い身体に斑の濃緑色の模様が入った、体調10メルくらいある大蛇だった。
毒持ちで噛まれない様に立ち回る必要があったが、大蛇の頭が向いた者は噛み付きを集中して回避し、その間に他のメンバーが囲んで刃を立てていく方法で粘り勝ちした。大蛇は皮革も高く売れるため出来るだけ綺麗に倒したかったのだが、大分傷だらけにしてしまった。大きな2本の毒牙が討伐証明部位で、一応皮革も剥いでおく。毒腺も上手く取り出せれば高値で売れるのだが、毒腺を上手に取り出せる自信がなかったため、安全を優先して諦めた。大蛇は初めて捌く獲物だったので、魔石を見つけるのに少々手間取ったりもした。
大蛇を捌き終わると移動し、大蛇から東側へ移動したところで見晴らしの良好な場所を見つけ、そこで昼食用に持って来たサンドイッチを食べながら会議をする。
「さっきの大亀はきっとAランクよね?大蛇もBランクの中位くらいだったと思うし、この辺りの深さのところで狩りをしときましょうか」
「そうですね。ここより深いところだと、手に負えない魔物が出てきそうな気がします」
ユイエの同意にサイラスとメイヴィルも頷いていた。
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