黄昏につぐ
黄昏につぐ
「黄昏につぐ」
西から黄昏が降る
青とオレンジが曖昧に溶けた空は
どこか人をセンチメンタルにするような気がして。
あたたかいような、寂しいような、
困った感情を持て余す。
まさしく、黄昏る。
暖色や寒色って言葉を作った人は、
この夕暮れ時の空を眺めたことはあるんだろうか。
その言葉、ドンピシャり。
そんな感じ。
ぼうっと景色を瞳に焼き付けていると、
コウモリが忙しなく飛び交い、
かわいい、かわいいとカラスが泣くのを耳にする。
誰が言ったか七つの子。
未だにかわいいと言っているようには聞こえない。
カラスの歌が終わると、
すぐそばで「みゃあ」と我を呼ぶ声が。
振り返るとそこには黒猫、いっぴき。
じいっと見つめていると、
そのままどこかへと飛んでいってしまった。
きっと、どこかの誰かに幸せを宅配しにいったのだろう。
黒、黒、黒。
なんだろう。
どうしてこうもこの時間になると
黒に遭遇するのか。
たまたまなのか、呪われているのか、
…あるいは、暗闇に備えよとの啓示なのか。
死ぬのか? 死ぬのか!?
死ねば良いのか私は!!
神よ。これがあなたの意思なのですか。
信じるものは救われる。
アーメン。
そうしてまたひと黄昏。
13度ほど十字架をきったころ、
あたりは本格的に暗くなってき始めた。
ポツポツと家屋の電気がつきはじめ、
空もそれにならって粒粒と光を灯し始める。
ああ、今日もこの時間が終わる。
黄昏は短い。
あの淡いキャンバスが次に見れるのは、
いつになるのか。
明日かもしれないし、明後日かもしれない
ふと、夕方。
雲のない西の空を眺めてみると
意外とばったり遭遇する。
空をだいだいの輪郭が形どる様はとても美しく、感傷的。
是非とも見てもらいたい、この黄昏。
また、「黄昏る」とは、今の私のように、
1人、ぼうっとしていたり、
感傷に浸るような様を表す。
周りから見ていれば、寂しかったり、
悲しかったりするように見えるかもしれない。
しかし、これがまた案外と悪くないものだ。
自分の心のうちを、
目に入るものと曖昧にして、
心地よく味わう。
それが、黄昏。
もし、
本当にブルーな気持ちをかかえていても。
きっと暖かく撫でられる時がくる。
さっき目に焼き付けたあの空のように。
そう信じて。
今はひととき、暗闇に袖を通そう。