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私が、

 目を開けると、恵美の、自分の部屋の天井が見えた。部屋の天井が、涙で揺れる。  

 体が震える。今見たことが、信じられなかった。

 ブラックアウトした、あの瞬間、亜美は死んだのだろうか。

 亜美は、私を追いかけて、死んだ。

 知らなかった。何も知らなかった自分に吐き気がする。

 

 つまらないプライドが、ヒガミが、直樹から亜美を奪った。

 

 亜美の一生を奪った。これからの人生を。

 生きてなんていけない。幸せになんてなれない。

 すべてを奪った自分。

 あの死の瞬間に、亜美はどれほど私を恨んだことだろう。憎かったろう。  

 吐き気がする。血が逆流する。崩れ始める。片割れを失った。あの喪失感を今また味わう。

 震える手でドアを開けて、目の前にあるドアをまた開ける。

 望んでいたはずの現実は手に入らなかった。

 暗く、寒い、向かいの部屋。目覚めたらいて欲しいと願った人はいない。

 片付いて人気のない部屋。額縁の中の笑顔の亜美。

 今日、私は二十一歳になった。写真の亜美は十七歳のまま止まっている。

 亜美を抱きしめる。

 涙が止まらない。ひんやり冷たい亜美は、笑顔のまま何も言わない。

 

 私のせいで亜美の時間は止まってしまった。

 

 なぜ、自分が死ななかったのだろうか。亜美より、自分が死んだほうがよかった。

 あの恋は、亜美から私への罰だったのだろうか。 

 亜美から全てを奪った自分への、亜美からの罰。


 もう二度と直樹には会えない。

 私が、直樹から亜美を奪った。


 会えるはずがない。


 


 私が、亜美を、殺したんだから。


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