クリスマスのデート
現実のクリスマス、夕方に浩平と東京駅で待ち合わせをした。
周りはやはりカップルだらけで、なんだか居心地の悪さを感じた。そのとき、浩平が現れた。
「どこいく?」
恵美が言うと、浩平は頰を指でかきながら、言い出しにくそうに言った。
「恵美ちゃんさぁ、ディズニー好き?」
「え?」
「友達が優待券くれたんだよね。今から行かない?」
一瞬、思考が停止したものの、恵美は頷いていた。
昨日の夢と同じ道のりであの場所へ向かう。隣にいる人だけが違う。
「俺、超久しぶりなんだけど」
私、昨日行った。
とは絶対に言えなかった。実際、行ってないのだ。夢で見ただけで。
ゲートをくぐり、パークの中に入ると、カップルの笑い声や、音楽に包まれる。昨日のことが、あまりにも鮮明に思い出される。確かに昨日とはクリスマスの装飾も違う。
でもいたのだ。昨日の夢の中で、ここに。
「何から乗る?」
笑顔の浩平に、笑顔を返す。ちゃんと笑えているだろうか。
「浩平君の乗りたいものでいいよ」
そう言うと、浩平は少し考えていった。
「じゃあ、ビックサンダーマウンテン!」
思わず唇を噛み締めていた。ばれないように頷く。
何個か乗り物に乗って、閉園の時間が迫ってきていた。
綺麗なイルミネーションと音楽に包まれて、二人で飲み物を買ってベンチに座った。
ココアを飲んで温まると、突然昨日の山内の顔を思い出した。
「恵美ちゃん」
呼ばれて隣をむくと、浩平が真剣な顔をしてこっちを見ていた。
「あの…」
思い詰めたような顔をして、恵美を見つめている浩平を、恵美も見つめ返した。
これは、もしかして。
山内に告白された時に感じた雰囲気を、感じていた。
二度目だということもあり、恵美は落ち着いて浩平を見つめていた。
あの時のように、心が動くかもしれないと期待しながら。
浩平はそれをOKと受け取ったのか、そのまま恵美に顔を近づけた。
キスされる事に気づいて、恵美はそのまま受け入れた。
恵美にとって、初めてのキス。
その相手に、浩平は申し分なかったし、受け入れたいと思った。
この人の事を、好きになりたいと思った。キスをしたら、何か変わるかもしれないと思った。山内と初めてキスをした時に、想いが深まったように。
一瞬、唇が触れた。
そして、もう一度、今度は長く触れた。
その瞬間、恵美は浩平を押していた。
違う。
後ろに押されて、びっくりした顔の浩平が恵美を見ると、恵美は泣いていた。
「ご、ごめん」
浩平は一瞬何が起きたのか分からなかったが、泣いている恵美を見て、自分が悪いのだと思って恵美に謝っていた。 それに恵美は首をぶんぶんと横にふる。
「どうしたの?」
浩平が聞くと、恵美はまた首を横に振った。
「ごめんなさい」
恵美が顔を両手で押さえながら、吐き出すように言った。
「ごめんなさい。好きなひとがいます」
あれは、夢だ。そう何度も思おうとしても、できなかった。
同じ場所で、同じ事をしているのに、隣の人が違うだけでこんなに温度が違う。
好きな人じゃないと、こんなに楽しくないんだ。
好きじゃない人のキスは、こんなに違うんだ。
はっきり、分かってしまった。
山内のことが、本気で好きだ。




