2人の写真
風呂からあがって、携帯を見たらメールが届いていた。
(明日、暇?)
コーヘイからだった。
急にスッと心が冷える。
こういう出会いを望んで合コンに参加したはずだったが、すでにそんな考えは頭から消えていた。
恵美に好意をもつ人物は、すでに彼女から見ればしつこい男として処理されていた。山内ただ一人を除いては。
恵美は持っていた携帯をソファーに投げつけて、ベッドに倒れこんだ。机の上に飾ってある恵美と亜美が二人で写っている写真が目に入る。
…写真。
恵美はベッドから起き上がり、急いで恵美の部屋の向かい側の部屋に入った。
ドアの横にある電気のスイッチを押し、明かりを点ける。
恵美の部屋にあるものと同じキャビネットの横に置いてあるダンボールを開けて、恵美は亜美のアルバムを探した。あんまり写真が好きじゃない、数少ない亜美の写真は一冊にまとめてどこかにしまっているはずだ。
ダンボールの奥から分厚い一冊のアルバムが見つかった。恵美はアルバムをめくりながら自分の部屋に戻った。
高校の入学式の亜美の写真を見つけて、さらにめくった。その次のページを開いて、恵美の動きが止まった。
このまえ夢で見た写真とまったく同じ写真がそこにはあった。マミからもらった修学旅行の写真。自分で撮った写真。全部覚えている。
その写真を見て不意に涙がこぼれた。あの長崎の公園で、二人で撮った写真。
山内の隣にいるのはまぎれもなく、恵美であったはずなのに。
人は、亜美と恵美をよく間違える。
親でさえ間違えることがあるほどよく似ている双子。
二人を絶対に間違えないのは、お互いだけだった。
写真には、亜美と、山内が、笑顔で映っていた。
結局、この恋は本当に亜美の物語でしかなかった。




