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渋谷デート

 気づくと外にいた。びっくりして周りを見渡すと、そこは渋谷だった。

 大きな街頭ビジョンには当時流行っていたアイドルの曲が流れていた。4年前の渋谷だ。

 後ろを向くと、ハチ公がいる。

 これはまさか、いわゆる…。

「ごめん」

 振り向くと山内がいた。

「待った?」

「デートだ」

「は?なんだよ」

 思わず笑みがこぼれた。山内が照れていた。

 山内はジーンズに、Tシャツにおしゃれなブルゾンを羽織っていて、四年後の私の世界にいても通用するおしゃれさんだった。

 彼氏がイケメンすぎる。


 ランチでハンバーガーショップに入り、食べながら喋っている時に、始めてまともに山内と話していることに気づいた。

 知らないことだらけだった。姉がいること、サッカー部だということ、ピクルスが嫌いだということ。そしてそのピクルスは食べてあげた。

 お店にいる間も、山内は周りの女子の注目の的で、私は誇らしさと同時に、自分でいいのかという不安を感じた。

 店を出て、渋谷から表参道に向かって二人で歩いた。そして自然に手をつないだ。

 平日なので表参道は比較的すいている。

「え?双子なの?」

 山内が驚いて私を見た。

「双子なの」

 私は思わずにやけた。

 でも、そういえば夢の中で私は一度も私に会っていない。「恵美」に会っていない。

「一卵性?」

「そっくりよん」

「おまえ、本当に亜美?」

「ごめん実は今日は恵美」

 ふざけあって二人で笑った。

「ドッペルゲンガーに気をつけろよー」

「はい?何言ってんの?」

「知らないの?会ったら死ぬんだよ。よくわかんないけど。マンガで見た」

「マンガかい」

「世界に3人そっくりさんがいるっていうけどおまえはあと1人しかいないんだねー」

「そーいやそうだね」

 ふと思ったらそうだなと思った。すでにそっくりさんが一人いるわけだ。

「恵美ちゃん可愛かったら紹介して」

「だからおんなじ顔だってば」

 二人で笑いながら表参道から原宿を歩き回る。こんなに話が尽きない人も珍しい。一緒にいることが楽しくて仕方ない。 


 

 十二月の最初の土曜日。合コンの日だ。

 大学の友人四人と、友人の知り合いの男の子四人で、居酒屋で飲むことになった。

 恵美はバイト終了とともに、慌ただしく待ち合わせ場所である新宿歌舞伎町のドンキホーテに赴いた。

 男たちより十分程早く女だけで集まることになっており、すでに到着していた三人と合流した。

 どんな男がくるか予想を立てる。女子全員彼氏がいないので、クリスマスへ向けての意気込みは半端ではない。

 約束の時間を五分ほど過ぎて、彼らはやってきた。

「中の下」

 友人の評価だった。容赦のない評価に恵美は苦笑した。

 飲み屋に入ってすぐは、全員ぎこちなく男女交互に座っていたが、一時間後には進んで席替えを繰り返した。

 楽しいけれど、恵美は彼氏を作ることに気が進まなくなっていた。友達との約束の手前、仕方なくの参加だった。実際彼氏がいないのに、いるような気分になっていたのは山内のせいだった。それじゃダメなのに。

 どうしても山内と比べてしまう。比較対象が悪すぎる。

 他に好きな人を作りたいのに、作れない。

 居酒屋を出てから全員でカラオケへ行った。合コンの王道コースだ。

 朝方カラオケを出たら、男子は酔いつぶれて弱っていた。ピンピンしている女子全員は呆れてそれを見やった。

 なんだかんだと、それぞれ携帯番号を交換してあっさり別れた。それから家に帰って、眠った。

 久しぶりのオールに、体は意外と平気だった。



「亜美、歌わないの?」

 突然イノッチに話しかけられた。驚いて見渡すと、カラオケボックスにいた。マミとさっちゃんが二人で熱唱していた。

「あ、歌う歌う。イノッチ一緒に歌おうよ」

「何歌うー?」

 歌い終わったマミが話しかけてきた。

「最近山ちゃんとどうよ?」

 ギクッとした。合コンをしたことで、山内に対して罪悪感があることに気づいた。

「うふふ、秘密」

 気づいたことがおかしかった。

「亜美ー勝手に曲入れるよー」

 イノッチがリモコンを操りながら言った。

「ねー、もうチューした?」

 マミにそういわれて飲んでいたウーロン茶を漫画のように素で吹き出した。

「きったねー」

「大丈夫?亜美」

 鼻に入った。

「やだー!したの?したの?どうだった?」

「どうだったって…何が」

「やっぱりレモン味なの?それともイチゴ味なの?奴は」

 再び吹き出した。

「あははは、何言ってんのマミー」

 さっちゃんが大爆笑だ。

「だってなんか奴は少女漫画の住民っぽいじゃーん。アイドルみたいだし」

「あー彼だけはレモンであって欲しいって感じなのね」

 イノッチが笑いながら口を挟む。

「イノッチは?もうしたの?ってかもうやっちゃった?」

「やってねえよ!」

 真っ赤なイノッチ。

「もうマミはほっといて歌うわよ!亜美!」

「はい」

「ちぇ~」

「ちぇ~って!漫画かよ!」

 マミのため息につっこむさっちゃん。

 流れてきたのは私が高校のときにデビューした男性アイドルグループの曲だった。

「ナイス選曲~」

 大爆笑のマミとさっちゃん。しかも振りつきで歌うイノッチに私も大爆笑。面白すぎるこの人たち。本当にこんな世界があってほしい。一生この人たちと付き合って生きたい。明るい歌のはずなのに、なんだか悲しくて仕方なかった。 






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