昔王太子に無実の罪で婚約破棄され投獄された公爵令嬢は高い塔の上に住まう絶望の魔女となり転移してきた勇者にハーレムに入れと勧誘された。彼女が勇者に語った話とは?
「お前俺のハーレムに入れ!」
「断る」
私は絶望の魔女。高い塔の上に住まう魔女だが目の前にいるバカを見てこう返すしかなかった。
「お前は巨乳だ!」
私は異世界からやってきた勇者とやらが魔王を倒してやるかわりに王と取引してハーレムを作ることを同意させたのだと高らかに言うのを馬鹿かと思うばかりだったが。
私の胸をいやらしい視線で見る勇者とやらに私はどうしてやろうと久しぶりに怒りを感じていた。
まずひとつ、私は勇者とやらを召喚などしていない。
そして魔王を倒してくれなくても別にいい。
魔王はこの世界の天秤の一つであり私と同格。それを倒せば世界の天秤が傾くのだ。
それをよしとはできん。
「お前のその胸を俺は揉みたい! 200歳で年齢が17歳ほどにしか見えないというのも魅力だ! 一発やらせろ。いやお前処女か? それも重要だ」
「……」
馬鹿と話をするのは疲れる。
どうしようかなと頭を抱えてしまっていた。
ハーレム要員とやらの女たちが困ったようにこちらを見ている。
いやお前たちはいいけどさ、私はこいつのハーレムの一員とやらになることを了承してはいない。
「私はお前の転移にかかわっていない。しかも私は王の管理下にない。だからお前のハーレムの一員となる義務はない」
私が正論で返すと王と取引したと男は何度もばかのように言い返す。
年は私ほどに見えるがこいつも見た目通りの年齢じゃないなと思う。
「あのな、私は絶望の魔女。この世界の天秤の一つ。魔王と同格だ。だから私が魔王を倒す手伝いをすることは世界の破滅につながる」
「はあ?」
「だからな」
あほにもわかるように説明をしないといけない。
私はどうして魔物がいるこの塔の上にこいつがきた?と頭を抱えた。
強い力を持っていることがわかる。しかもハーレムとやらの女たちが魔法攻撃、防御、回復。剣士、しかも武闘家までいるなら仕方ない。
いやなんというか多種多様な女たちがいるのに満足しないとは。
「あー、くろだゆうきとやら」
「あ? どうして俺の名前を!」
「えっとな引きこもって15年、確か15でいじめられて30歳になったときに心臓発作を起こして死んだお前はそのまま若いハンサムになって転生したいと神様に願いチートを授かって今確かこの世界にきて2年か転移転生か?」
「……おい俺は黒霧の!」
「二つ名は結構だ。くろだゆうき、お前は本来はにほんという国のひきこもりであったが……」
「だからやめろ!」
金髪碧眼の勇者とやらに私はため息で返した。かなりのハンサムとやらになっていはいるが私を婚約破棄をして牢屋に入れた王太子よりは落ちるな。
「私は魔王と対局に位置するようで同じものだ。まあつまりなあシーソーがあるじゃないかそんな感じなんだ。それに悪いが私はお前を転生とやらさせたその神の管轄から外れた存在だ。この世界の人の意識の集合体の絶望という負の存在を形にした依り代で魔王と似たり寄ったりのものなんだ」
「何をわけをわからんことを!」
「まあ聞け、シーソーにな同じ体重の人間同士がのっていて今釣り合ってるのだよ。魔王が魔物の意識の集合体で私は人間の意識の集合体でな」
私は魔法で小さなシーソーを出して人形をそこに乗せたピタッと止まる。
そしてもう片一方の人形をとると……。
「ほらつり合いが今なくなった。つまりなあ魔王を倒すと破滅に揺らぐということ」
「わけがわからん!」
私はどうしたらいいのかなと思う。だからな魔王と魔女はこの世界には必要で。
まあ魔王が片一方いなくなったら世界は緩やかに滅びに向かうと。
「緩やかな滅び?」
「緩やかであるから、まあ100年は持つ。そして新たな魔王が生まれるのさ。だがなあ、私という存在の次位はすぐ必要であって。私がつまりなここから出て魔王を倒す手伝いとやらをすると即座にその天秤が崩れてな世界は滅びる」
まるでわかってない勇者。私はこの世界の天秤。天秤の中でも魔王と同格ではあるが自然発生はしない。
魔王は自然発生するからまあなんとかはなるが魔女は次の魔女を待たないとダメ。
何とかかみ砕いて説明をしてみた。だがダメだった。
「力づくでハーレムの一員にしてやる。レリア魅了を!」
「はい勇者様!」
私は仕方ないとばかりに呪文を唱える。逆らうものは消してもいいといわれているんだ。
「満点の星、そこから降り注ぐ光よ!」
私の詠唱のほうが早く、塔の中に白い光が降り注ぐ私は防御をしたがハーレム一員とやらの魔法使いは間に合わない。
「……馬鹿なやつ」
手加減はした。女たちは怪我をした程度だが勇者とやらは黒焦げだ。
いや私を何度も説得はしたぞ? まるでいうことを聞かんのだこいつ。
「魔女様……」
「お前たちはもう自由だどこへなりと行くがいい」
ハーレムの女たちに私は声をかける。おいおい感謝さえされてしまったぞ。
「……はあ」
私は昔王太子の心変わりの末、婚約破棄をされて無実の罪で投獄された公爵令嬢。
そしてその牢で囚人たちに……。
そこから先は転落人生、牢の中で慰みものにされ気が狂い病で死にそうになったところをなぜか絶望の魔女となりこの塔の番人さ。
ああ、王太子とやらは王になってはいたが復讐はしてやった。魔物の群れに放り込み生きながら食わせてやった。まあ気は晴れんがな。
「また馬鹿が一人」
この塔の上にくるものは魔女に願いを求めるもの。
だがしかし、対価を必要とする。馬鹿を一人殺してしまったが力づくで魔女に言うことを聞かせようとしたものの末路は全部これさ。
「ああ疲れた」
私は塔を掃除して、今日も暇だなと窓の外を見た。
馬鹿な勇者とやらが転移とか転生とか召喚とかもうされないといいなと思いながら。
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