怪談「清水寺」
若干のグロ表現があります。
このお話は会社の後輩Nさんに聞いたお話です。
それはNさんがまだ女子中学生だった頃、学校の修学旅行で二泊三日の京都旅行に行ったときのお話です。
一日目はクラス単位で動き、二日目は班での自由行動だったそうです。
先生もいない仲の良い友達だけで遊べる自由な時間、Nさん達はワーワーキャーキャー騒ぎながらプランにそって観光していました。
色々巡り、最後に寄ったのが清水寺でした。実は前日に来ていたのですが、ある理由でまた来る事にしていました。
その理由は・・縁結びで有名な「地主神社」を参拝する事と「恋占いの石」に挑戦するのが目的だからでした。
もちろん、一日目でこの神社には参拝したのですが、当然「恋占いの石」に挑戦する生徒が多く、石の周りは生徒でごった返します。そんな慌しい中で挑戦するのなら一日目は参拝だけにして、二日目の班行動で改めて挑戦しよう!とみんなで話し合った結果でした。
そして無事「恋占いの石」に挑戦をし、あとは清水寺をぐるりと巡って帰ろうとなりました。
本尊や音羽の滝を周り、丁度清水の舞台の真下に来たあたりの事です。
Nさんはなにか・・・ストンッっとした感じを首の後ろ辺りに感じると何故だか急に悲しくて仕方なく、体が凄く寒くなりガタガタ震え勝手に涙がぼろぼろと溢れでて、仕舞いにはその場から動けなくなり過呼吸まで起してしまいました。
驚いたのは一緒にいた友人達です。
「え?!なに!Nちゃんどうしたの??」
と異変に気がつくと、どう見ても尋常じゃない様子のNさん!しかし、Nさんは普段から過呼吸を起しやすかったので仲の良い友人は過呼吸の対処になれていました。
すぐに持っていたビニール袋をNさんに渡すと口にあてて呼吸をさせ、
「ちょっと!!N!!大丈夫?!誰か!誰か助けてください!!」
っと周囲の観光客に助けを求めました。
そして誰かが呼んでくれたのか、清水寺の関係者の方が駆けつけるとすぐに救急車を呼び、そのままNさんは運ばれていったそうです。
その後、社務所に保護された友人達は事情を説明、駆けつけた先生方と共にホテルへと帰ったそうです。
Nさんは気がつくと病院のベッドの上でした。
自分に何が起きたのか全く記憶が無く、ただ凄く悲しくてそれは今でも同じでボロボロと涙を流しながら目覚めました。
そんな様子を見た先生方は相談をし、とりあえず今日はこのまま病院に泊まり、明日体調を診て判断をする事にしたそうです。
そして、その日のうちにNさんのご両親にも連絡が行き、すぐに京都まで駆けつけ来るとの事でした。
相変わらず凄く悲しい気持ちは治まらず、涙も止まらないのですが妙に頭はスッキリとしていて、(何で私こんなに悲しいんだろう・・・)と冷静に考えていました。
その後、両親が病院に来てくれるとなんだか気持ちも落ち着き、その日は両親と共に病院に泊まりました。そして、その夜Nさんは夢を見たそうです。それは・・
Nさんはなんだか凄くさびしい場所にいてそこは酷く寒い風が吹き、近くには向こう岸が見えないほどの大きな川が流れていたそうです。
「え?ここ何所??」
Nさんは全く見覚えの無い場所に困惑し辺りを見渡しましたが、周りには何も無くただそこが川原だという事だけは分かりました。
「なにここ・・・なんでこんな場所に・・・そうだ・・帰らなきゃ!」
そう思いとりあえず引き返そうと後ろを振り向こうとしましたが、何故は体が動かない・・・そして、自分の意思とは関係なく足が勝手に川のほうへと歩き出していました。
「!!? え?!何で?!・・やだ・・やだやだ!!そっちには行きたくない!!」
Nさんは必死で抵抗しようとしましたが、体は全く言う事を聞きません。体を捻ろうとしても、踏み出す足を止めようとしても、いっその事その場にしゃがみこもうとしても、自分の意思とは関係なくゆっくりですが歩みは確実に川へと進んでしまいます。
「行きたくない!行きたくない!!帰りたい!ここから帰して!やだ・・やだ・・そっちはやだよぉ・・・」
何故川へと行きたくないかは分からないのですが、心の底から絶対に川に行ってはいけない!行きたくない!っと思ったそうです。
必死に抵抗をしていると、いつの間にか自分の後ろから何かが近づいてくる気配がしたそうです。それは・・・引きずるって歩く様な音や、ぺたぺたとなにか張り付きながら歩いている様な音。それらは複数・・いや、大勢いる様に感じたそうです。
「・・・なに?なんか後ろからついてくる・・・怖い・・・怖いよぉ・・」
自分の意思で動かせない体、後ろから迫ってくる大量のナニカ・・・Nさんの恐怖は自分の許容範囲を超えたのかもうわけがわからなくなり、これは夢なのか?現実なのか??・・・何も考えられず、ただ凄く怖いという感情だけが本物でした。
「怖い・・怖い・・・・・嫌だ・・・怖い・・嫌だ・・・やだ・・・こわい・・・やだ・・こわい・・」
もう体を動かす事より「怖い」と「嫌だ」だけがどんどん膨らみ感情すらコントロール出来ない状態でした。
そんなNさんはとうとう川のすぐ側、あと一歩進めば川に足が入るという所までつくとそれまで歩んでいた体がぴたりとその場に立ち止まりました。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・止まった?・・・・・・・・」
極限の恐怖の中で止まった事に気がつくのには少々時間がかかったそうです。
「・・・・止まった??・・・・ああ・・・止まった・・・助かった・・・の?」
そう思った次の瞬間
「ズズ・・・ズズ・・・ズズズ・・・」
「ぺた・・ぺた・・ぺた・・ぺた・・」
そう、今まで後ろを付いて来たナニカがすぐそこまで迫っていました。
「・・・ああああ!!・・来た・・もうすぐ後ろまで来た!!」
そう感じた頃にはそのナニカが追いつき、Nさんの横を通り過ぎる・・・かと思いきや、ソレはNさんの足元を通り過ぎた様に感じたそうです。
「・・・え?・・・何か・・・小さいナニカが通った・・・」
もの凄く怖いはずなのに、何故か凄く気になり、足元に目を向けようとするのですが、やっぱり体は言う事を聞かずただ川の方をじーっと見ています。
そんなNさんの足元を通過したナニカは、
「・・・ぽちゃん・・・ぽちゃん・・ぽちゃん・・」
っと、次々と川と落ちて行きます。それは小石が水に落ちるような・・・なにか小さいモノが次々とNさんの足元を追い抜き落ちていく・・・Nさんはそれまでもの凄く怖かったのに、その音と通り過ぎる感覚を感じていると不思議な感情になり、「・・・何が落ちていくのだろう?」っと何気ない感じでひょいっと顔を無意識に下げると・・何故か体が言う事を聞きそのナニカを見たそうです。そして後悔したそうです。
そのナニカの正体は・・・
ピンク色の・・・うごめく・・形にもならない・・・まだ未発達の赤ん坊達でした。
「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
・・n・・・N・・・N!・・N!! ぉぃ・・ ぉい・・・ おい・・・ おい!・・おい!確りしろ! N!おい!確りしろ!! 起きろ!!起きろN!!
それは、Nさんの父親が呼ぶ言葉でした。
目の焦点が合い、Nさんは目の前で自分の肩を押さえ、必死の形相で呼びかける父親の顔を見ると
「・・・おとうさん・・・」
そうつぶやきNさんは気を失ったそうです。
その後、両親の話によると、夜中に急にNさんがぜいぜいと息をし始めたかと思うと痙攣を起したそうです。
すぐにナースやドクターが来て処置をし、その場は治まったのですが、ドクター曰く「次痙攣をおこしたらいよいよ危ない状態に陥るかも知れません」っと言ったそうです。
そして、様態の変化が容易に分かる様、集中治療室へと向かう途中に二度目の痙攣。暴れる我が子を必死で押さえた父親が呼びかけると痙攣が治まり意識が戻った。との事でした。
その後、Nさんは集中治療室へと入りましたが様態が嘘の様に安定し、次の日の朝には普通に起きれたそうです。
そしてNさんは昨日見た恐ろしい夢の話を両親に話した所、熱にうなされ悪い夢を見たのじゃないか?といいましたが、あまりに怖がる我が子と気持ち悪い夢の話を聞いて、「一度お払いをしたほうがいいかしら?」っと母親が言ったそうです。
その後、Nさんは経過を見つつ2日ほど入院しましたが、容態も安定した事もあり退院する事が出来たそうです。
3日遅れで京都から戻ったNさん。すぐに学校へは行かず、一応様子見という事で2日ほど家で過ごした後、学校へと復帰しました。
その家ですごした2日間でお払いにも行ったそうです。
そして、そのお払いをしてくださった神社の神主さんはNさんを見るなりビックリしたそうで、その理由は
「この子の後ろや肩や足腰に水子の魂が数え切れないほど憑いています・・・私は長年神主をしていますが、これほどの事を見たことがありません」
っと驚愕したそうです。
何故これほどの水子の魂がNさんに憑いてしまったかは未だに謎だそうです。