表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ショートショート:「逆転」

 T市に住む男Hは、朝起きて異変に気づいた。外に居るのである。それも、裸で。首には、首輪がついていて、その首輪は、小さな小屋に繋がれていた。

「まさか、俺が、犬になったとかじゃないだろうな」

 Hは体を触ってみる。毛深くない。人間のままだ。

「さあ、餌をやりますわよお」

 誰かがガラス張りのドアから出てきた。Hは飛び上がった。なぜなら、出てきた者が鼠であったからだ。

「さあ、餌をたっぷり食べて、いい警察人になってね」

 鼠は、ドロドロの気持ち悪い、嘔吐物のようなものが入った器を差し出した。とてもじゃないが、食べる気にはならない。

「こんなの食えるかよ!」

 Hは知らん振りをした。

「まあ、いけない人ちゃんですね!食べないと、お仕置きよ!」

 鼠は、ベルトのようなものでHを殴った。とても痛い。少なくともHには、そのような趣味などない。

「食べるまで、やめませんわよ。」

「ったく、仕方ねえな」

 Hは、いやいや餌を食べた。ローストチキンの味がする。美味しい。

「なんだ、見た目は悪いが美味いじゃないか。」

「いい子。じゃあ、私は買い物に出かけるから、大人しくしておいてね。」

「ううむ、餌は美味かったが、何故こんなことになっているんだ?普通、ペットにするとしたら、鼠が人間を、じゃなくて人間が鼠を、だろう。ひょっとして、俺は悪い夢を見ているのか?」

 Hは頬をつねった。痛い。

「やはり、夢じゃないらしい。これはどういうことだ。」

 そこで、いきなり裸の人間が四足歩行でこちらに近づいてきた。

「ほほう、ということは、あれは野良人間だな。」

「おう、お前飼い人間か。可哀想に・・・。野良は、飯は食いづらいが自由で楽しいぜ。おや、鞭の後があるなあ。飼い主は鼠か。全く、酷いもんだ。」

「お、おい、お前、この世界のこと良く知っているみたいだな。どういうことか、教えてくれよ。」

「ああ、知らないのか。じゃあ教えてやる。だいぶ前、そうだな、多分、一ヶ月くらい前くらいにだな、『動物を大切にしよう運動』が始まって、それがだんだんエスカレートして、人間と動物の立場を逆転させたのさ。特殊な薬を動物にうってな。動物たちは人間の事をかなり嫌っているみたいだから、元には戻れないだろう。それより、こんなことは人間の中では常識なのに、なんでお前さんは知らないのかい?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ