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転生隠者と転移勇者 -ヴァラカスの黒き闘犬-  作者: 拉田九郎
第4章 護り手は見出したりて
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シェーンの片想い

 深夜。

 夜通し酒を飲む愚か者以外は寝静まる時間。

 先刻の少女が流石に風呂を上がっているだろうとセージが清掃に向かうと、女湯に煌々と灯りが灯されていることに気付き足を向けてみたのは幸いだった。

 何を考えていたのかシェーンが一人湯船に浸かって、長風呂しすぎたのだろうのぼせて意識朦朧としているのを発見し、すぐにレナとフラニーを呼び出して介抱させる。

 二人に部屋へ連れて行かせると、彼は毒付きながらも淡々と清掃を行った。

 ついでに一風呂浴びて寝室に戻れば、ラーラも待ちくたびれたのだろうベッドで丸くなり、すやすやと寝息を立てていた。


「はぁ・・・。クソっ」


 何日、愛し合っていないだろう。

 久しぶりに、と話していたのにこれでは、朝起きたらまた愚痴の一つでも聞かされそうだ。

 ギルドマスターに就任して以来、共にベッドで過ごす回数は週に一、二回と減っている。

 セックスレスは不仲の原因にも数えられる事だし、最近やけにセージに言い寄って来る娘も少なからずいる事から若干の焦りは感じていた。

 ベッドに静かに忍び寄ると、端に腰掛けてラーラの綺麗な栗色の髪を左手でそっと撫でる。

 ハーピーのラーラは優しく撫でられる感触にうっすらと目を開けてセージの顔を見上げて言った。


「んん・・・どうしたの?」


「何でもない」


「そう・・・」モゾモゾと身を揺すって身体を動かし、ベッドの半分を開けて右の翼を広げる「・・・寝ましょう・・・早く来て・・・」


 いっそう眠そうに身体をよじらせるハーピーは、とてもではないが愛し合う状態ではない。

 セージは深くため息を吐くと、ブーツを脱いでチュニックを脱ぎ、ベッドの脇の小さな丸テーブルのうえに放り投げてズボンを脱ぎ、下半身は股引一丁という姿で横になると乱れた毛布を広げて自らとラーラを覆うように掛けた。

 ラーラは毛布の中で大きな翼を器用に広げ、熟れた身体を押し付けるようにセージを包み込む。

 普段ならそのまま愛し合うのだが、ラーラもそうだがセージ自身今日はやけに疲労を感じていたため右腕を大きく投げ出してゆっくりと目を閉じる。

 ラーラは彼の身体を包み込みつつ、投げ出された太い腕を枕にするように頭を乗せ、眠りについた。





「どうしてコンナコトニ・・・」


 朝。

 自室で目覚めたシェーンは、水枕を当てがわれて寝かしつけられていた事に気付き、ベッドの上で半身起こして嘆いていた。

 彼女の目論見では、清掃に来たセージを誘惑してそのまま・・・と言ったシナリオだったのだが、彼は一向に現れる気配は無く、諦めればいいのにもうちょっと、もうちょっとと湯船に浸かって待ち続けた結果、酷くのぼせて意識を失ってしまっていたのだ。

 何気に女性を大切にするセージの事だ。たとえシェーンが裸で倒れていたとしても襲うという選択肢は無いだろう。

 事実、起きたシェーンを見つけてフラニーが怒り口調で言ってきた。


『アンタ、ほんっと、バカよねっ。セージだって女に飢えてるわけじゃないんだからラッキースケベからそのまま行為に走るわけないでしょうがっ! それでのぼせて風呂場で溺れかけてたら世話ないわよ!』


 とは言え、


「ああ・・・どうすれば抱いてくれるのかなぁ、おじさま・・・」


 少女の悩みを他所に、セージはというと祭りの打ち合わせとかで既に出かけたという。

 許可をくれたラーラからして、なんと言うだろう。

 もしかして、万に一つの確率も無かったから自信を持って彼に近付くのを許してくれたのだろうか。

 悩めば悩むほど、虚しくなってきてシェーンは毛布を頭から被り、ベッドの上で丸くなった。


「ああああー、おじさまの馬鹿おじさまの馬鹿おじさまの馬鹿っ!」


 身悶えるシェーン。

 そんな事をつゆ知らず、ラーラが扉を開けて彼女の様子を見に顔を覗かせて来た。


「シェーン、いつまで寝ているの? お仕事出来ないくらい辛いの?」


「ひいっ!?」


 びっくりしてシェーンが飛び起き、勢い毛布が宙を舞う。

 入口から不思議そうに首を傾げている妙齢なハーピーに、寝巻き姿のシェーンは慌てて向き直って言った。


「い、いいい、今着替えますっ! ごめんなさい、すぐ行きますっ!」


「ええ、まぁ、無理はしなくてもいいのだけれども。所で、セージとはちゃんと出来たの?」


「いやっ!? そ、それはぁ・・・」


「そう。どっちでもいいのだけれど。私はまた、冒険者の達と市場に行って来るから、他の達と宿の方はお願いね?」


「あっ、はいっ、いってら〜っ、しゃいい〜・・・」


 シェーンの言葉が終わるのを待たず、ラーラは彼女の部屋を後にしていた。


「少しご機嫌斜め? ラーラさんも、昨日はおじさまと愛し合ってない、とか・・・?」


 そうであれば、少しは気分も晴れると言うものだ。

 しかし、と、首を勢い良く左右に振ってシェーンはベッドから飛び降りて衣装タンスに小走りで駆ける。


「ダメダメ、人の不幸を望むようになったら終わりだよ。しっかりしろ、ぼくっ」


 シェーンはタンスを開けると、寝巻きを脱ぎ捨てて手早く緑色のメイド服に着替え始めた。






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