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転生隠者と転移勇者 -ヴァラカスの黒き闘犬-  作者: 拉田九郎
第4章 護り手は見出したりて
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ギルドの厩の珍騒動

 レナ・アリーントーンは、程の良い依頼クエストにありつけずに冒険者ギルドの厩の掃除をして日銭こづかいを稼いでいた。

 本当は、冒険者らしく遺跡の探索だとか、邪悪なモノの蔓延る塔の攻略だとかを求めていたのだが、掲示板に書き加えられるのは迷い犬の捜索だとか家出少年の連れ戻しだとか、未払いの滞納金の取立てだとか、およそ冒険者らしくない(レナ、小坂部麗奈にとっては、だが)仕事ばかり。

 森をうろつくゴブリン討伐だとか、人を襲った肉食獣の討伐だとかもあるにはあったが、大概ベテラン冒険者に流れてしまう。

 運良く取れたとしても、パーティメンバーのフラニー、フランチェスカ・エスペリフレネリカからレンジャー経験者のいない現状では危険度リスクが跳ね上がるからと却下される始末だ。


「経験しないとスキルが上がんないのは当然じゃん。みんな慎重すぎだっつーの」


 レナはボヤきながら熊手で集めた乾草をピッチフォークで突き刺しては馬達の餌箱に放り込んでいく。

 厩は縦長の作りで幅20メートル、長さ60メートルの広さで天井は3メートルほど。

 衝立で仕切られた小部屋に一頭ずつ馬が留め置かれており、餌箱に乾草を得た馬から順に顔を埋めて食べ始める。

 一通り餌を上げ終えて、厩内の床掃除に箒を振るう頃には十時を回っていた。

 馬の世話など、生まれてこの方やったことなどなかったが、レナは基本的には動物が好きなので獣臭なども気になる事はなく淡々と業務をこなしていたが、馬の世話があまりにも平凡すぎて一瞬ここが異世界なのだと言うことを忘れてしまう。

 

(大学受かったら、新しいゲーム買ってもらおう。VRMMOって、まだ完成してなかったっけ。ファーストファンタジアの新作ってVR対応するといいんだけどな)


 ぼーっと元の世界の感覚で物思いにふけって箒で床を掃いていると、厩の最奥に山と積まれた乾草がゴソリっと動いた気がして意識を強制的に戻されるレナ。


「・・・え、なに?」


 素で驚き乾草を凝視するとゴソリっと、乾草の山がモグラでも這っているかのように一部分が隆起した。


「・・・えー・・・」


 腰が引けた構え方で目を白黒させて周囲を見渡す。

 とりあえず誰かいないかと思ったが、異変を気にする素振りも見せない馬達がのんびりと乾草を喰んでいるだけだ。

 ゴクリと唾を飲み込んで、レナは箒を槍のように構えて乾草の山に一歩ゝゝ近付いて行く。


「えー、なーにー・・・ちょっとー・・・。マジで・・・。ちょっとやめてよー・・・・・・。えーな〜に〜・・・?」


 警戒しつつあと10メートルまで迫った時、乾草の山から三箇所の隆起が発生し、ゴソゴソ、モゾモゾと不気味に不規則に動き出してレナの腰が一層引けた。


「なになになになに!? えっ! やだっ、何!? やだっ、もー。ちょっと・・・。触手の化け物とかデカいミミズとかやめてよね・・・!?」


 思い切り後退って箒を構えるレナ。

 乾草の山から、黒い影が唐突に飛び出してレナに一直線に飛来してきた!


「ひゃー! きゃー! なになに!? やめてー!!」


「「「あはははは! おねーちゃー!」」」


 子ハーピー(プチハーピー)達だった。

 子ハーピーのアルア、ビーニ、チェータはレナに飛びかかるや両腕に、右太腿にしがみついて甘えてくる。


「・・・かっ!?」


 一瞬、何事か理解が追い付かずに固まるレナ・アリーントーンこと小坂部麗奈。


「あはは、ねーちゃー」

「びっくししたー?」

「びっくしー?」


 驚いて固まっていたレナは、元凶が子ハーピー(プチハーピー)達と知るや、


「アンタらー! 悪戯がすぎるわよ!!」


 激昂して箒を振り上げる。

 パッと逃げ出した子ハーピー達は、いつの間にか飛べるようになった様子で厩内を飛び回り、


「「「あはははは、おこったー。おねーちゃーおこったー!!」」」


 楽しげに玄関口から逃げ出して冒険者ギルドの屋根の上に姿を消して行く。


「くっそー、アルア、ビーニ、チェータ、今度やったら許さないかんね!!」


 レナの喚き声が、よく晴れた空に響き渡り、厩の馬達は彼女の声をやかましそうに耳をはためかせたり脚を踏み鳴らしたりしていた。






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