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朝食、時々お出掛け模様

 双子姉妹の仕事がひと段落した所で、カウンターの奥の部屋のテーブルを囲んで朝食についた。

 かつてはマーシャの寝室だった部屋で、今は食器棚や簡易的なキッチンが置かれた食卓に様変わりしている。部屋の真ん中には長方形のテーブルと六脚の背もたれ付きの椅子。

 子供達プチハーピーは身体が小さくて椅子に座れないことから、相変わらず床に毛布を敷いて大きな木の皿にハムエッグトーストを載せて仲良く啄んでいた。

 テーブルはやや長い長方形で、右にセージとラーラが並んで座り、セージの正面にシェーン、奥側にリンジェとレンジェが向かい合って座りハムエッグトーストを手掴みで食べる。

 食器を使わない事からハーピーでも気兼ねなく食事を取れるのはいい事だと、セージは内心喜んでいた。

 子供達、アルア、ビーニ、チェータがハムエッグパンを食べ終えてか取っ組み合いを始めると、母ハーピーのラーラが咎めるように睨みつけて叱る。


「あなた達、食堂で遊ばないの! 埃が立つでしょう?」


「「「チチチチチチチチチチー! キョロロロロ」」」


「怒るわよ?」


「キュー、キョロロ」

「チチー! チチー!」

「ヂッヂッキュー」


 鳥語で抗議する子供達プチハーピーと、叱る母親のラーラ。

 一緒に生活しているが、セージにも鳥語は分からない。ただ、山小屋と違って子供達が自由に外を出歩けないのはストレスにはなっているようだったので、セージはため息混じりに子供達に向かって視線を投げかけて言った。


「退屈なんだろう。そう怒るなラーラ」


「アナタは甘やかしすぎなのよ?」


「そう怒るな・・・。アルア、ビーニ、チェータ、首輪にリードを付けるなら、ギルドに連れてってやるぞ。ギルドの地下室なら結構広いし、飛ぶ練習もある程度出来るだろう」


「本当!?」

「つれてってー!」

「首輪はヤー」


 リードを付けるのは嫌なようだが、一緒にお出かけはしたい様子でセージの足元に集まってくる。

 ラーラが困り顔で言った。


「セージ、あそこが何に使われてたかは知ってるでしょう? 嫌よ、あんな薄暗い所に子供達を遊ばせるのは」


「だがー・・・町の近くではどんな人間が居るかわからん。自由には遊ばせられないしな・・・」


「やっぱり、山に戻る?」


「俺は構わんが」


 と、シェーンの様子をチラリと見ながら言うセージ。

 シェーンはちょっと悲しそうに微笑んできて、胸がチクリと締め付けられる。

 ラーラはと言うと、こっちはもっと複雑そうな顔をしていた。


「お風呂作ってくれる?」


 呆気に取られたような酷く驚いた顔でセージが首を傾げて言った。


「そこなのか・・・?」


「女にとっては死活問題よ」


「風呂桶を作らせよう。あと、湯を沸かす為の窯も。薪で沸かす風呂も身体が温まる。良いものだぞ?」


 すごく微妙そうな顔で目を閉じて口をつぐむラーラ。

 ちょっとイラついてセージは肩を怒らせると小首を振って困った顔をした。


「なんだよ!?」


「ううん別に」


「いいじゃないか、ちゃんとした風呂だぞ?」


「そうなんだけどー」


「何が気に入らない!?」


 畑の様子やら色々と中途半端で放置して来た山小屋が少なからず気になっているセージは、宿生活を惜しいとは思うが別段山小屋生活に戻ってもどうにか出来ると考えている為、ラーラ達が戻ると言えば帰るつもりでいたのだが、どうやらラーラの方が帰りたくなさそうな様子だ。

 テーブルに肘をついて、翼の関節に顎を乗せてラーラが言った。


「ここのお風呂ほど、理想のお風呂ってなかなか無いのよね・・・」


「いや、当たり前だろう。俺がいた世界の技術に近い。この世界じゃあ珍しい機能的な風呂だ」


「でしょう?」


 と言って、セージの目をじっと見つめてくるラーラ。


「コラキアに川が流れているから、生活用水路が街中に通されているから出来た設備だ。山じゃ作れん」ラーラの様子を伺って、遠くを見つめ出したのを見て「なんだよ! 風呂が理由か?」


「おふろー!」

「ほかほかー!」

「ぷかぷかー!」


 子供達もお風呂は気に入っているらしい。

 家族の誰も山に帰りたく無いと言うことか・・・。

 セージが頭を抱えていると、ハムエッグパンを食べ終えたリンジェとレンジェが全く同じ表情で真面目にセージを見つめて言った。


「「冒険者ギルドの前の通りは、商店街の方々の理解があります。私達がご一緒すれば、お子様達に外で遊ばせることは可能です」」


「簡単に言うな。商店街に迷惑がかかる」


「多少鳥の羽が落ちて来た所で」「きっと気にも掛けません」


「憶測でものを言うんじゃ無い。店の前ではしゃいでたら迷惑だろうが」


「それこそ」「憶測の域を」「「出ませんが?」」


 流石双子息があっていてちょっと怖い。

 セージは首を二、三度振ってハムエッグパンに齧り付いた。


「ともかくだ」


「アナタ、食べながら喋らないで」


「むぐ・・・」モグモグ、ごくん「ん・・・」陶器のマグカップを引っ掴んで白湯を一口飲んで流し込む「ともかく、その。何を言おうとしたんだっけ・・・」


 双子が小首を傾げた。


「「お年ですか?」」


「おい、失礼だぞソコ。まだそんな年齢じゃ無い」


「物忘れ」「と断じますが」


「コイツら・・・」


「違うの」「ですか?」


「違う!」


「「そうですか」」


 ちょっと残念そうなのが余計に尺に触る。

 何か言いたげに口を開くセージに、シェーンが笑顔で言った。


「一度、商店街に連れて行ってみましょうよ」


「シェーン、お前まで何を言い出すんだ」


「子供は遊ぶのが仕事ですから。一度商店街に連れて行ってみて、皆さんが受け入れてくれるのなら遊ばせても問題無いんじゃないかと。ダメならダメで、また考えましょうよ。ねぇ、ラーラさん?」


 ラーラはシェーンの琥珀色の瞳をじっと見つめて、他意がなさそうなのを確認すると、ため息をついて言った。


「そうしましょうセージ。子供達の遊び場も、ちゃんと考えなくてはいけないし。商店街なら人の目も多いから危険は減るでしょう?」


「小動物に弓を射かけて遊ぶような小僧とか、人攫いなんかもいるかも知れんし」


「冒険者を雇って見張らせて」


「おい、職権乱用になるんだぞ」


「ギルドマスターでしょう?」


「「ご依頼はご用意出来ます」」


 やけに協力的な双子に、眉根を寄せるセージ。

 シェーンはどこか楽しげにセージの反応を見つめ、子供達はお出掛けに乗り気でセージの両肩に、頭によじ登って身体を楽しげに上下させていた。

 子供達にしがみつかれて疲れた顔をするセージ・ニコラーエフ。

 双子は微笑ましそうに子供達を見つめ、ラーラは不安がないわけではなかったが子供達の様子に愛情のこもった眼差しを向けて少しだけ微笑んで見せた。






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