4.緩木結香の新ジョブ
「そういえば私、アイドルデビューすることになったよ」
「へ?」
結香の家に招かれた日から一週間後の、とある昼休みでの出来事。
結香の突然の言葉に、結香の作ってきてくれた弁当を食べようとしていた綺羅星の箸が止まった。
結香のその言葉に、僕は心当たりがあった。
「ああ、あの件か」
「ちょっと、知ってるのなら教えなさいよ。なに一人で勝手に納得してんのよ」
「教えるから足構えるのやめろ」
僕は一通り綺羅星に事情を話した。
といっても、僕の話はあくまでも予想でしかないため、横から結香からの補足説明を受けながらだが。
話を纏めるとこうだ。
結香はあの日僕と別れた後、黒波さんに電話をして話を聞き、スカウトを受けることに決めたそうだ。
その結果がさっき言っていたアイドルデビュー。
結香の歌唱力を買ってとのことなので、ある意味予想通りといえば予想通りだろう。
結香の場合、その見た目も性格も相まって人気になりそうだ。
「アイドルと言っても、大勢で組むユニットとかじゃなくて、私含めた二人組メンバーでやるんだって。今度早速レコーディングするから、その時にもう一人のメンバーの子と会う予定なの。楽しみだなぁ~♪」
「ちょっと待って……色々と話が急展開過ぎてついてけないんだけど……」
奇遇だな、僕もだ。
まさかここまで早くことが進むとは。
結香がアイドルデビューか。
まさか彼女が課金する側から課金される側になるとはな。
「事務所の方はどうするのよ?」
「移籍って形で9673プロダクションが手続きしてくれるって言ってた」
「モデル業はやめるの?」
「うん……私は、刹那ちゃんみたいに色んな仕事を平行してはできないから、今はアイドル業に専念するつもり」
「本気なわけ?」
「うん、本気だよ。刹那ちゃん」
結香と綺羅星は互いに目を合わせる。
はたから見ている僕には分からないが、確かに二人の間で何かが交わされたのだろう。
結香は笑い、綺羅星は息を吐いた。
「そう……ならおめでとう、結香。いち早くあなたの歌声が聞けるのを楽しみにしてるから」
綺羅星は顔を崩して笑い、結香の手に、自らの手を重ねた。
結香はそれを見て微笑み返す。
「うん、ありがとう刹那ちゃん。私頑張るよ!」
「また頑張りすぎて無理したら承知しないからね?」
「あはははっ、大丈夫だよ!」
「そう言えば、グループ名とかはまだ決まってないのか?」
ふと思いついた疑問に、結香は得意げにこう答えた。
「『ペルソナキュート』。それが、私たちのユニット名だよ♡」
こうして、結香のアイドルデビューが決まったのだった。
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