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8.イベント:【甘々? デート♡デート】 前編

 突然だが、僕はデートを楽しいものだとは思わない。


 世間の『デート』と言えば、思い浮かぶのは男女が一緒に出かけることだろう。

 身も蓋もない言い方をしてしまえば、それは関係を維持するために行なう整備みたいなものであり、相手のご機嫌をとったり、いい感じの雰囲気を作るための努力をしなくてならない。


 つまり何が言いたいのかというと、僕はそういう何処かの街を無意味に歩いたり、一緒に写真を撮るだけで一日が終わってしまうようなデートを、心底つまらないと思う質なのである。

 ではどうするか?

 その答えは、今回来た場所にある。

 僕が(友達)デートに選んだ舞台、それは――。


「VRゲーム?」


 そう、ここは秋葉原にあるゲームセンター内に設置されたVRシミュレーションのゲームコーナー。

 VR――専用ゴーグルを装着して、バーチャルリアリティーの空間を移動し遊ぶあれのことだ。

 待機場所の目の前には、ゲームセンターのフロア半分を埋めた広いエリアがあり、銃の形をしたコントローラーを持った人二名が、何かに対して発砲しているの姿が見えた。


「何処か面白いところないかなて探してたら、ここのサイトに行き着いたんだよ。丁度予約も空いてたし、結香は運動神経もいいし楽しめそうかなと思ってな」

「うん! すごく面白そう!」


 つまらないと感じるのならば、自分から面白くしていけばいい。

 だから僕は、僕もしたくて、結香も楽しめそうなここをチョイスしたというわけだ。


 事前予約はバッチリとしておいたため、順番は直ぐに回ってきた。

 僕らはイヤホン付のゴーグルを被り、銃型のコントローラーを受け取った。

 ゲームが始まると、目の前に広がっていたのは、宇宙船のようなシンプルなデザインをした近未来的内装の部屋であり、僕の手には巨大でゴツゴツした銃が握られていた。


『これすごいね七芽くん!! 本当に本物みたいだよ!』


 ゴーグルに内蔵された専用レシーバーから結香の声が響く。隣を見るとそこには全身戦闘服を着た結香のアバターが手を振っていた。


「はしゃぐのはいいが、声のボリュームはもう少し落としてくれくれ。耳がキンキンする」

『ああ、ごめんごめん』


 だが、結香の意見には同意だ。

 VR経験なんて僕もはじめてだから少し侮っていたが、中々どうしてすごい。

 まるで本当に別世界に飛ばされた感じがする。これが異世界転生というやつか(違う)。

 何事も、一度は体験してみるものである。


 感激しているのもつかの間、銃の取り扱い方法、ゲーム内での禁止行為などが説明され、ゲーム本編が開始された。

 このゲームの設定は、SOSを発した宇宙船内に潜入して、船内に溢れかえったエイリアンなどを倒していく、SFシューティングゲームだ。

 武器が工具なら、アイザック・クラーク気分が味わえたことだろう。

 部屋のハッチが開いて早々、異形のエイリアンが次々に入ってきたのが見えた。


『ガァアアアアッ!!』


「お! 来たな! 撃て撃てっ!」


 僕と結香は持っていた銃のトリガーを引き、ゲーム内で銃をぶっ放し、エイリアンを蜂の巣にしていく。

 流石ゲームセンターに設置されているだけあって、その姿は比較的に見れる形をしている。リアルSAN値チェックをすることはなさそうだ。

 にしても……。


『よっ! はっ! とりゃ!』

「あいつシューティング上手すぎだろ……」


 結香は先ほどから一度も標的を外すことなく、敵を殲滅している。

 身体能力が高いことは知っていたが、まさかここまで体を使ったゲームで発揮されるとは思わなかった。

 もしeスポーツにVRゲームの部門があれば、いい成績を残しそうだ。


「結香、えらくこのシューティングゲーム上手いな」

『そう? ありがとう! それなら七芽くんのハートも、ここで打ち抜いちゃおうかなー?♡』

「はは、冗談きつい――」


 バン!


「え?」

 

 その瞬間、目の前は真っ暗となり、あるテキストが表示された。


[仲間の誤射により死亡。リスポーンしますか? 『はい』・『いいえ』]


 あれぇ……?

 これ死んだぱてぃーん?


『あれ!? 七芽くん何処行ったの!?』

「お前の弾に当たって死んだんだよ」

『え、ええええ!? そんなゲームだから冗談だったのに!?』


 僕はすぐさまリスポーンして戻ると、現れた僕に結香が抱きついてきた。


『よかったぁ~! 七芽くんが生き返ってくれて! もう会えないかと思ったよ!』

「隙あらば抱きついてくるなっ! 他の人も見てるんだぞ!?」


 そう、ゴーグルを付けて忘れてしまいそうになるが、僕らのプレイは待機している人たちに丸見えであり、今こうして抱きつかれている姿ももちろん見られているわけだ。

 その証拠に、先ほどから舌打ちや口笛が聞こえてくる。

 

『えへへぇ~♡ 久々の七芽くん成分だぁ~♡』

「こら! ゲームに集中しろよ、おい!」


 その後、僕らは仲良く一回ずつ死んでリスポーンしゲームを再開した。

 結香の活躍はそのまま止まらず、なんとラスボス戦までいってしまいゲームそのものをクリアしてしまったのだ。

 その景品として、結香はUFOキャッチャーの中から好きな景品をもらうこととなり、選んだのはプライズフィギュアのスターダストブラスターだった。


「はい、七芽くん♡」

「何で僕に渡す」

「私の課金行為だよ♡ 今日は弁当とかも作って来れなかったからさぁー」

「いいよ別にそんなの……」

「それならキスの方がいいかな?」

「受け取らせていただきます」


 だがここで、そのまま結香のいいなりになるのも癪だ。

 だから僕は、結香からスターダストブラスターのフィギュアを受け取ると、そのまま結香にへと渡した。


「へ? なんで返すの?」

「僕の物を結香にやっただけだ。だからそれは結香が受け取れ」

「ふふっ……七芽くん好きぃ♡」

「ああはいはい、そうだな」


 僕は結香に顔を見られないよう、そのまま彼女の手を引いて、ゲームセンターの外へと急いだ。

 早く顔の熱を冷ましたかったから。


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