中央本線 藤野-甲府
藤野駅を列車は発車した。上野原に入れば、もう正真正銘の山梨県である。山梨県に入ると、降りる人が目立ってきた。上野原、四方津、鳥沢、大月あたりが少しスーツ姿のビジネスマンの方が多かった。そう広高は見ていた。その隣には早くも寝ている穂高がいた。
笹子を過ぎたところにある長大たる隧道を列車は疾走する。およそ五キロの区間、ゴーッと隧道独特の響音がする。その響き渡る音によって、穂高は目を覚ました。
「ここはどこ?」
「山梨県にある甲斐大和駅。」
「もうそんなところ?」
「速いだろう。」
「寝始めたときは、相模湖か藤野だった気がする。何キロ過ぎたのか。」
「約45キロメートルかな。時刻表見て、営業キロという欄からわかる。」
「え、時刻表ってどうやって見るの?」
「縦に列車の時間、横には駅名が書いてあるから、乗りたい列車を辿っていく。基本的に、同じ路線はまとまっているから使いやすい。乗り換えるときは、例えば松本駅だったら大糸線が分岐しているから、大糸線の時刻を別に確認する必要がある。」
広高は、そう実際のJR時刻表を見ながら教えていた。そうするうち、甲府駅に到着し、特急待ちの時間の間に駅の中にあるトイレに入った。