東京駅
「穂高、下りるぞ。」
そう言われて、京浜東北線の電車に乗り換えた。京浜東北線は、この時間には快速は存在しない。全て、この区間では山手線と同一だ。わずか10分ほど、というより10分も経つことなくして東京についた。
東京駅に京浜東北線で到着した。六番線から一番線へと移動する必要がある。穂高は広高に話しをした。
「こんな人混み初めてだよ。」
「穂高?」
「地元の県から出たことなかった。金を親のギャンブルや暴力に使われるから。」
「長野県民だけど、旅行やら仕事で他県に行ったよ。」
「どこまで?」
「西は島根、広島や四国全県、北は青森。」
「なんでそんなに多いの?」
「親父やお袋が旅行好きだったのと、転勤族だったから。」
「金持ちしかできないと思ってた。」
「穂高、そんなことはないさ。なにせ県境を越えて通勤通学するという人も多いみたいだな、東京では。」
「え?」
「君は親に教えてもらっていなかったのか?」
「そうだよ。親は何にも教えてくれなかった。代わりに痣を受けた。」
そう言うと、穂高は広高に背中にできた傷跡を見せた。
「…。豊科署の警察に言おう。」
「え。これ警察沙汰なの?」
「当たり前や。こんなことする親など親ではない。日本での当たり前の生活を、君は受けられなかったんだよ。」
「その当たり前ってどう言うことなの?」
穂高がそう聞くと、広高は唖然としていた。
そうするうち、中央線のホームに到着し、ロングシートに座ったのだった。
「乗り換えが多いね。」
「そのくらい普通や。」
「長野県でも?」
「長野県の場合、高速バス派と電車の『しなの』『あずさ』派に分かれるなあ。鈍くて安いか、早くて高いかの棲み分けってやつ。」
「さっきまで住んでたところだと、歩いて行く、も追加だと思う。」
「アホか。余計に出費が嵩むわ。」
「野宿すれば良い。」
「風邪引くし、虫に食われるわ。」
「それなりの対策…」
「高いわ。」
ボケとツッコミの応酬が始まった。




