始まりは突然に。
少々コメディチックでもありますが、シリアス感も満載ですのでよろしくお願いします。
「あなたは何かしらの理由でこの世界に転生されたの」
一体何を言ってるんだこいつは。精神科もどの薬を処方しようか迷う症状だろこれ。
「さっさと現実を受け入れなさいよ。私だって神じゃないんだから具体的なことなんてわからないけど、これだけはわかるわ」
「......」
「あなたは何かしらの理由でこの世界に転生されたの」
「さっき聞いたよ?」
俺たちはこのやり取りをもう何回も繰り返している。だって「あなたは何かしらの理由でこの世界に転生されたの」っていうオチとか誰も納得しないでしょ。
間抜けな表情で返事をした俺を見るなり彼女は俺の頬をビンタした。
「私だって暇じゃないんだからさっさと納得しなさいよこのバカタレが!」
「いってーな! 納得できねーもんは納得できねーだろうが! パート前の母親みたいな物言いしやがって! クソババア!」
「はぁ!? ババアじゃないわよ! まだ十七歳よ! クソジジイ!」
ビンタされたことにより今まで溜まっていたいろんなものが爆発した。
「ていうかなんで俺は急にこんなところにいるんだよ! ここはヨーロッパなのか!? でもなんでやけに耳が長いヤツとか尻尾が生えてるヤツとかいんだよ! もしかしてここはコスプレ街だったりすんのか!? あぁ!?」
「いい加減納得して静かにしなさいよ! せっかく拾ってやったんだから私たちの仲間になりなさい! それが嫌なら野垂れ死ぬかモンスターの餌になるか! どっちが良いの!?」
いやどっちも嫌でしょ。
「嫌ならさっきも言ったように私たちの仲間になりなさい。あなたと同じように転生された人がたくさんいるわ」
彼女は腕を組みながら言う。
「一体なにがなんやら......」
ため息と共に自然と出てくる言葉。
俺は先程彼女から聞いた言葉を思い出していた。
ここはいわゆる剣と魔法の世界らしい。多くの人間が主にクエストで街の外へ行き、モンスターなどを狩ってはお金にしている。この世界ではそういう稼ぎが一般的で、自分がいた世界で言うサラリーマン。ただいつも危険が付き纏うみたいだ。ま、当たり前か。モンスターっていってもやっぱり絵に描いたようなモンスターなんだもんな、どうせ。にわかには信じ難いが、でもここは明らかに自分のいた世界とは明らかに雰囲気が違う。街では鎧に身を包み、腰身に剣を携えてる奴がたくさんいる。モンスターと言うのだから、炎を吐いたり、空を飛んだり、何かわけのわからない力で人間をねじ伏せるのだろう。まだ聞いてはいないが、魔王とかもいそうだ。そして剣と魔法の世界とうたっているのに、何故か遠くの方にビルみたいのが見えるし……。
「なんなんマジで......」
壮大なドッキリであることを願う。
「まぁ、混乱するのは無理もないけど」
そして俺と話す彼女もまた転生された人間の一人で、彼女以外にも割とたくさんの転生者がいるらしい。しかし何故急にこの世界に転生されたのかはわからない。そして良くある物語では、このような世界に転生されたら魔法が使えるようになるなどの特典があるはずだが、この世界ではないらしい。しかし、転生された人間のほとんどに、ある共通点があると言った。それは......。
「超能力」
そしてもちろん俺も、超能力者だ。